研究課題/領域番号 |
25291107
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
前田 隆浩 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40284674)
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研究分担者 |
高村 昇 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (30295068)
山崎 浩則 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (40346953)
草野 洋介 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (70325637)
青柳 潔 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80295071)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 頸動脈内膜中膜複合体 / 心臓足首血管指数 / コホート研究 / 遺伝子多型 / 糖尿病 / CD34 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究では、655人(男性:250人(38.2%)、女性:405人(61.8%))の住民から基本的臨床データをはじめ、頸動脈内膜中膜複合体(CIMT)、心臓足首血管指数(CAVI)など動脈硬化の臨床指標データと臨床検体を収集した。一次解析結果では、平均CIMTが1.1mm以上の住民は10名(1.53%)、CAVIが9.0以上の住民は119名(25.3%)、ABI(ankle brachial index; 足関節上腕血圧比)が0.9未満の住民は12名(2.6%)であった。平均血圧は136/77mmHgで、266名に高血圧を認めたが、そのうち154名が降圧薬を内服していた。降圧薬を内服している住民は全体で327名(49.9%)おり、降圧薬を内服していない高血圧の住民は112名(17.1%)であった。65名(9.9%)が糖尿病と判定され、そのうち17名(2.6%)は未治療であった。中性脂肪が150mg/dl以上の住民は103名(15.7%)で、HDL-コレステロールが40mg/dl未満の住民は48名(7.3%)であった。 動脈硬化は血管リモデリングの亢進によって形成されるが、血管リモデリングにはCD34陽性細胞が関与していることから、動脈硬化と血管リモデリングは骨髄機能と密接に関連している。平成27年度の研究によって、骨髄機能指標の一つであるCD34陽性細胞の血管内皮修復効果は高血圧によってマスクされている可能性を示したが(Atherosclerosis: 2015)、体格と骨髄機能は有意に関連しているため、日本人に特異的な動脈硬化リスク因子について解析を続けている。 また、2014年度と2015年度に収集した血液サンプルからDNAを抽出し、先行研究(Eur J Hum Genet 23(3), 374-380, 2015)を参考に遺伝子多型を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、主に長崎県五島市における特定健診・高齢者健診と連携して実施している地域コホート研究である。平成24年に478人(男性184人、女性294人)、平成25年度に328人(男性135人、女性193人)、平成26年度に1,598人(男性554人、女性1,440人)、平成27年度に655人(男性250人、女性405人)の住民に協力してもらい各種データとサンプルを収集し、データベースへの登録と凍結保存が順調に進んでいる。 コホート集団の追跡調査については、平成26年度に五島市と長崎大学との間で締結した包括協定に基づいて、五島市との情報提供に関する覚書を交わし、さらに死亡個票の目的外使用申請を行って、研究に参加してくれた住民の追跡調査(特に異動と死亡)体制を整えた。また、五島市の中核病院に設置されたNECデータウェアハウス(DWH)を活用して検診データと診療データを連結させるとともに、五島市に設置している研究拠点(離島医療研究所、予防医学研究所)に研究補佐員を配置し、中核病院以外の五島市内の病院で情報収集する体制を整備することができた。動脈硬化性疾患と骨折を主なアウトカムとして位置付け、追跡データの収集が順調に進んでいる。 また、遺伝子多型解析については、充分なデータとサンプルが揃っている2014年度と2015年度の血液サンプルからDNAを抽出し、先行研究(Eur J Hum Genet 23(3), 374-380, 2015)を参考にrs3782886の遺伝子多型解析がほぼ修了している。
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今後の研究の推進方策 |
五島市が実施する健診と連携した動脈硬化検診は次年度以降も継続していくが、動脈硬化には多くの要素がかかわることから、歯科検診、骨粗鬆症検診、リウマチ検診等の特殊検診を充実させて、多角的研究と医科・歯科共同研究の体制作りを進める。また、追跡調査(疾患発症、異動、死亡等)のデータが集積してきたため、データベースを改良して検診データと医療データ、住民データを連結させたデータベースの構築を平成28年度前半に完了する。2014年度と2015年度の全血液サンプルからDNAを抽出し、日本人を対象とした先行研究(Eur J Hum Genet 23(3), 374-380, 2015)で動脈硬化と関連が報告された遺伝子(rs3782886、rs4618210、rs3803915)について多型解析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データとサンプルの収集は毎年度順調に進んでいるが、遺伝子多型解析については、効率性・経済性を考慮して、サンプルがある程度蓄積してから最終年度で集中的に解析することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度開始早々に保存サンプルからのDNA抽出と遺伝子多型解析を開始し、年度前半で目的遺伝子の多型解析を終了する予定である。
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