研究課題/領域番号 |
25292004
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 豊 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (40345872)
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研究分担者 |
永澤 信洋 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (90599268)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イネ / 球状型胚発生突然変異体 |
研究概要 |
本研究はイネの初期胚形成時の細胞分化機構を明らかにする事を目的としている。発生における細胞分化過程は分化を誘導するシグナルの「生成・伝搬・受容・分化を誘導/維持する遺伝子発現」といったシステムの中に存在する。申請者のこれまでの研究で、イネ胚形成初期の細胞分化に受容体型キナーゼを含む複数のキナーゼを介した情報伝達が働く事を明らかにした。受容体型キナーゼは細胞間情報伝達の基本的な構成要素であり、胚形成時の細胞分化を誘導する未知シグナルの存在を示唆している。本研究ではイネの胚形成時の細胞分化に機能する細胞間の情報伝達を世界に先駆けて明らかにする。また、この細胞分化機構の胚形成後の機能や種を越えた普遍性を検証し、地上部形質改変等の育種学分野での応用も検討する。 平成25年度は表現型が不安定なイネ球状型突然変異体の不安定さを逆手に取って、通常致死になる球状型変異系統ではできない実験として、変異ホモ型系統を用いた、セカンドサイトミュータゲネシスを行い、M2種子の収穫を行った。表現型が野生型に復帰する復帰変異体候補をスクリーニングし、複数のリバータント候補を得た。 また、同じく球状型突然変異体の表現型解析も行った。シロイヌナズナのオルソログの変異において、原因遺伝子の機能と細胞分裂との関わりが類推されたため、変異型胚の受精後から3回の細胞分裂過程を詳細に観察したところ、特に変異体と野生型胚の間で、変わりがなかった。この事から、当該遺伝子は細胞分裂との直接的な関わりは無いと結論づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の計画通り、リバータントのスクリーニングを始める事ができた。また、球状型胚発生突然変異体の表現型観察も進める事ができた。ただし、実験開始前に考えていた仮説とは異なる結果が得られたので、研究の方向性を修正する必要がある。受容体型キナーゼのリガンドに関する実験はほとんど進捗がなかった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)表現型が不安定な球状型胚発生突然変異体の原因遺伝子下流で働く遺伝子ネットワークの解明 平成25~26年度にスクリーニングするサプレッサー変異体の表現型解析を行う。また、平成26年度以降、これら変異体の原因遺伝子をマッピングするための材料が整い次第、サプレッサー変異の原因となった遺伝子を同定する。以上の実験により、受容体型キナーゼの関わる情報伝達経路を構成する新たな因子を研究期間内に見つけ出せるよう準備する。また、当該変異体に類似した別遺伝子座の変異についても、原因遺伝子の単離を行う。ただし、これらの遺伝子が当該変異の関わる情報伝達に直接関わるか否かは単離した遺伝子次第で明らかになるケースとそうでないケースが想定出来る。そこで、平成25年度に構築したイネ初期胚の細胞分化を可視化する遺伝子マーカーを用いて、様々な球状型胚発生突然変異体を分類し、当該変異と関連する変異体を同定する。以上の実験により、イネの初期胚における器官分化を制御する一連の情報伝達を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度中に、論文として発表を計画していた内容が、当初の仮説と異なる結果が出たため、延期せざるを得なくなった。このため、論文発表に関わる経費を、平成26年度に使用する事となった。 新たな仮説に基づいた実験を平成26年度に計画している。この実験結果を加えて、26年度に論文投稿予定であり、このために当該経費が使われる予定である。
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