研究課題
基盤研究(B)
植物が次世代を生み出す最初のステップである受粉は、花粉を識別する花粉認識機構や花粉への養水分機構、花粉発芽・花粉管誘導機構など、機能の異なる多様なシステムにより制御されている。本研究は、この植物生殖における初期の重要ステップである受粉を分子レベルで解明することを目的とする。まず最初に、シロイヌナズナ柱頭上における受粉の経時的動態変化を観察するための技術基盤を構築した。高倍率実体顕微鏡下で「人工受粉の容易さ」・「観察可能花粉粒数の多さ」・「撮影中の焦点維持」を兼ね備えるタイムラプス観察法(1分間隔・90分間)を確立し、通常のシロイヌナズナ花粉は受粉後数分から30分程度で認識および吸水を完了し、1時間以内に花粉管発芽・伸長に至ることをライブイメージングにより再確認した。次に、Laser microdissection(LM)と次世代シーケンサー(NGS)の併用による乳頭細胞特異的LM-NGSトランスクリプトームについて、バイオインフォマティックス解析により絞り込んだ受粉の鍵ステップ「花粉と雌しべ間の認識・情報伝達」・「花粉への水分供給」・「花粉管の発芽・誘導」の各ステップに関する候補遺伝子を多角的に精査し、そのうちの「花粉と雌しべ間の認識・情報伝達」・「花粉管の発芽・誘導」への関与が推定されるリガンド因子と「花粉への水分供給」への関与が推定される因子についてT-DNA系統86種を育成・栽培し、上記ライブイメージングにより受粉動態の形態観察を行った。その結果、リガンド因子については1系統、水分供給因子については2系統の表現型への明確な影響を確認し、これらをそれぞれの候補因子として絞り込んだ。また、シロイヌナズナ花におけるwhole mount in situハイブリダイゼーション技術の条件検討を行い、最適な実験法を確立した。
2: おおむね順調に進展している
シロイヌナズナにおける受粉の経時的動態変化を観察するためのライブイメージング技術を確立した。また、受粉への関与が予測される各種因子のT-DNAノックアウト系統を育成し、本技術により「花粉と雌しべ間の認識・情報伝達」・「花粉管の発芽・誘導」と「花粉への水分供給」へ影響を及ぼす候補因子をそれぞれ1種と2種に絞り込んだ。シロイヌナズナ花におけるwhole mount in situハイブリダイゼーション法を最適化した。
平成25年度に絞り込んだ3種のT-DNA系統について、各種顕微鏡を用いてより詳細な形態観察を行い、遺伝子ノックアウトの受粉への影響を精査する。また、いくつかのT-DNA系統については、whole mount in situハイブリダイゼーションにより発現部位・時期を詳細に調べるとともに、各候補因子の機能解析を行う。バイオインフォマティックス解析を継続し、選抜候補因子の精査を継続する。「花粉と雌しべ間の認識・情報伝達」に関連するT-DNA系統の育成と受粉への影響を観察する。
シロイヌナズナ花におけるwhole mount in situハイブリダイゼーション法について、Col-0標準系統を用いた最適化については平成25年度の計上予測をはるかに下回る額で効率的に達成することができた。しかし、解析対象とする各種T-DNAノックアウト系統について、T-DNAのホモ化のための育成に時間を要し、whole mount in situハイブリダイゼーション法での解析は次年度に繰り越したため。平成25年度に最適化したwhole mount in situハイブリダイゼーション法により、平成26年度計上分と合わせて各T-DNA系統の詳細な遺伝子発現解析を行い、当該因子の発現部位および発現時期・パターンに関する特性を解明する。
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