研究課題/領域番号 |
25292006
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
築山 拓司 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00423004)
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研究分担者 |
奥本 裕 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90152438)
寺石 政義 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (80378819)
齊藤 大樹 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10536238)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 転移因子 / イネ / エピジェネティクス |
研究概要 |
本研究は、イネ活性型転移因子mPingが宿主ゲノムのエピゲノムにおよぼす効果を解析するとともに、mPingの転移と宿主のエピジェネティックな制御の関係を解明することで、転移因子を用いたエピゲノム育種を提案しようとするものである。 イネ品種銀坊主は1,000コピー以上のmPingを有している。25年度は、Post-bisulfite Adaptor Tagging (PBAT)法でmPing配列特異的なライブラリーを作成し、次世代シーケンサー(NGS)を用いてコピー間のメチル化状態の網羅的解析を試みた。その結果、mPing内部のシトシンの平均メチル化程度は、CG、CHGおよびCHHサイトにおいてそれぞれ95%、58%および31%であった。本研究結果を基に、これまでの研究で明らかになっている16箇所のmPing挿入位置のメチル化程度を比較解析したところ、活性型mPingではほとんど全てのシトシンのメチル化が低下したのに対して、不活性型mPingではメチル化の低下はほとんどみられなかった。このことから、メチル化程度の減少がmPingを活性化する要因であることが確かめられた。しかし、本年度は、ライブラリーの調整が不十分であったため、コピー間のメチル化程度を比較することはできなかった。 ユビキチン様タンパク質をコードするRurm1を機能喪失した突然変異系統IM294においてmPingは、メチル化の変化を伴わず、活発に転移している。これまでの研究から、IM294においては、コドン特異的にタンパク質翻訳が低下することが明らかになっている。IM294におけるmPing活性化機構を明らかにするために、iTRAQを用いた定量プロテオーム解析によって、IM294特異的にタンパク質量が低下している遺伝子の同定を試みた。結果の詳細は、解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書に記載した研究計画を概ね遂行できた。一方で、本研究の主要な研究計画である、NGSを用いたmPingメチル化程度の解析では、期待した成果が得られなかった。このことは、mPing特異的なライブラリーが作成できなかったためである。しかし、申請者らはすでに、改良したPBAT法を用いてライブラリーの再構築に取り組んでおり、次年度はmPingのコピー間でのメチル化程度の状態を網羅的に解析できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、mPingコピー間のメチル化程度の解析が不十分であったことから、26年度は、まず、再度NGSを用いてコピー間のメチル化状態を網羅的に解析する。 活性型mPingの中にはシトシンが高度にメチル化されたものが存在すること、およびコード領域に存在するmPingは切り出し頻度が高いことから、ヒストンの構造変化がmPingの転移に影響をおよぼしている可能性がある。そこで、mPingが存在する領域のヒストン修飾状態を明らかにするために、NGSを用いてChip-seq解析を行う。 mPingを用いたエピゲノム育種を効率良く行うためには、mPingの転移機構を明らかにする必要がある。平成26年度は、昨年に引き続き、不活性型mPingが転移する突然変異体のスクリーニングを行うとともに、mPingの切出しおよびその後のDNA修復について解析する。これまでの研究から、DREB1A遺伝子の上流に順向きおよび逆向きにmPing挿入を有する個体が得られいている。これらの交配によって得られたF1個体におけるmPingの挿入方向をPCRで調査し、mPingが切り出されたサイトが姉妹染色体を用いた相同組み換えによって修復されるかを明らかにする。また、ユビキチン様タンパク質をコードするRurm1の機能喪失がメチル化の変化を伴わずmPingの転移活性を高める分子機構を明らかにするために、Rurm1機能欠失系統IM294においてタンパク質翻訳効率が低下する遺伝子を同定するとともに、当該遺伝子のノックダウン系統を作出する。
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