研究課題/領域番号 |
25292016
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
飯嶋 盛雄 近畿大学, 農学部, 教授 (60252277)
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研究分担者 |
大門 弘幸 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (50236783)
泉 泰弘 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (90305558)
村上 則幸 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 上席研究員 (80355461)
辻 博之 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 上席研究員 (50425584)
杉山 高世 奈良県農業総合センター, 研究開発部, 総括研究員 (90393389)
山根 浩二 近畿大学, 農学部, 講師 (50580859)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ダイズ / 亀裂施肥 / 根粒着生制御機 / 水田転換畑 |
研究概要 |
1. 根粒着生制御機の試作 北海道の転換畑および畑作地帯での作業を想定し、50馬力以上の中型トラクタで作業速度0.5-1.0 m/sでの効率的な作業が可能な作業機を開発することを目的とした。土中に広範囲の亀裂生成が期待できる2枚の湾曲刃を備えたサブソイラをベースとして、大型資材ホッパと資材繰り出しのための接地輪を装着した作業機を試作した。播種時の種子直下と中耕時の条間への多段的な資材施用が可能になるように、播種機の着脱と刃の間隔調整ができることが、新型の根粒着生制御機の特徴である。 2. 根粒着生制御栽培基礎試験 奈良県農業総合センターでは、本技術の増収要因 (心土破砕、炭、根粒菌)と処理時期 (播種前、中耕時畝間、両時期)を検討した。その結果、播種前亀裂に心土破砕のみを行い、中耕時に畝間に根粒菌資材を投入すると、増収効果が最も高くなることが示唆された。滋賀県立大学では、播種前亀裂処理と中耕時の畝間亀裂処理のいずれかを行うことで、収量が対照区比20%以上を示した。しかし、両処理を組み合わせた多段亀裂の相乗効果は認められなかった。 北海道の芽室では、膨軟で通気性に優れる乾性火山灰土壌畑を供試圃場に、品種ユキホマレを供試した。その結果、単年度のみ実施した亀裂施肥効果は認められなかった。5葉期条間の亀裂施肥は北農研旧型試作機を用いて行い、処理後の生育不良、断根による葉温上昇等の悪影響が無いことを確認した。美唄では、北海道の水田作地帯で一般的な泥炭土の圃場において、品種ユキホマレを供試したが、芽室と同様に、初年度における処理効果を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時の当初案として提案した研究実施計画が、そのまま実行できたためである。まず、1の根粒着生制御機の試作と改良については、改良型の根粒着生制御試作機を作成した。当初予定では、牽引式管理機型ならびに心土破砕型を作成することとしていた。しかし、研究開始後のたび重なる議論により、あくまでも普及という出口を重要視した結果、作成コストを低価格にすることにより、農家への普及が可能な機種の開発を実施することとした。そのため、新型試作機は、牽引式管理機型であると同時に、播種機の着脱が可能な複合機型とした。2の根粒着生制御栽培基礎試験については、当初予定通り、奈良県農業総合センタ-と滋賀県立大学、北海道農業研究センタ-札幌と芽室に加えて、当初案では想定していなかった、美唄拠点を加えて総計5か所の試験地での実験を実施することができた。奈良県農業総合センタ-と滋賀県立大学については先行研究を含めたこれまでの研究蓄積があったため当初予定通りの実施が完了した。北海道での試験については、亀裂施肥機を使用した試験が初めてであったため、現場で起こるさまざまな事情により、処理効果がみられなかった。次年度研究と最終年度の2ヶ年で当初目的を達成する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
作成した新型の根粒着生制御機により、北海道の試験地において亀裂施肥試験を実施する。研究分担者全員が新型亀裂施肥機の試験走行を観察し、機械の改良について議論する。なお、開発に関与した企業と研究者間で協議を続け、試作機の特許申請の可能性を検討する。根粒着生制御栽培基礎試験については、奈良県農業総合センタ-と滋賀県立大学の実験圃場において、亀裂施肥の要因解析として、多段式亀裂施肥を実施し、心土破砕、炭、根粒菌資材の効果と処理時期の効果を検討する。美唄圃場では、今後2カ年にわたり連続施用効果を検討する。羊が丘と芽室試験場では、北海道における輪作体系を考慮して単年度試験だけで試験効果が現れるか否かを明らかにする。当初案では北海道の輪作体系を考慮した試験設計ができていなかった。そのため、根粒着生制御栽培応用試験については、今年度の北海道における試験成果と新型の根粒着生制御機の走行状況などから本研究期間内の実施が可能かどうかを判断する。近畿大学では、モデル化した亀裂施肥試験を、試験圃場とポット、根箱などの様々な実験系において実施し、根粒着生制御技術の将来的な可能性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に新型の根粒着生制御試作機を作成したが、共同研究者間で度重なる議論を行った結果、将来的な普及を視野に入れ、複合機として播種機の着脱を可能とした設計と試作を行った。したがって、複合機が実際の圃場試験でもうまく機能するかどうかを確かめるため、次年度についても改良をさらに進めていく必要が生じた。 圃場における亀裂施肥試験において試作機の走行を繰り返しながら、問題点を抽出し、試作機の改良を繰り返していく必要がある。したがって、平成26年度の圃場試験で試作機を使用した状況により、平成26年度における短期間の改良で完了すると想定される場合には、繰り越した予算を平成26年度中にすべて消化する。しかし、仮に試験走行の結果、さらに最終年度の走行状況を観察しなければならない必然性が生じた場合には、さらに繰り越す可能性もありうる。
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