研究課題/領域番号 |
25292017
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 卓 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30196836)
|
研究分担者 |
鵜飼 光子 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (20160228)
岡崎 由佳子 藤女子大学, 人間生活学部, 准教授 (80433415)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 園芸学 |
研究概要 |
ツツジ科スノキ属に分類される栽培種のブルーベリーおよびクランベリーに加え、北海道に自生する野生種5種の果実を材料に、含有するポリフェノール類などの含量および抗酸化能を調べた。その結果、青色果(ブルーベリー、オオバスノキ、クロウスゴおよびナツハゼ)のアントシアニン組成はほぼ同一で、果実当たりの含量は野生種で多いことがわかった。この理由は、ブルーベリーは果皮のみが着色するのに対し、野生種では果実内部も着色するためと考えられる。一方、赤色果(クランベリー、イワツツジおよびアクシバ)では、青色果と比べて含まれるアントシアニンの種類および含量ともに少ないことがわかった。果実の抗酸化能を調べた結果、DPPHラジカル補足活性値と果実アントシアニン含量に高い正の相関関係が認められた。また、DPPHラジカル補足活性法とESRスピントラップ法における抗酸化能の強弱は一致せず、抗酸化成分ごとに補足できるラジカル種が異なるものと考えられる。 バラ科キイチゴ属の栽培種(ラズベリー17品種およびブラックベリー2品種)並びに北海道に自生する野生種4種から採取した果実について、スノキ属と同様の調査を行った。その結果、スノキ属とは異なりアントシアニン含量と抗酸化能の相関関係は低かった。従って、キイチゴ属果実の抗酸化能には、アントシアニン以外のポリフェノール化合物が寄与するものと推測される。 ハスカップおよびアロニア果実から抽出したアントシアニン色素(Cyanidin 3-GlcおよびCyanidin 3-Gal)を小腸結紮ループ法でラット腸管に投与し、血液中に出現するアントシアニン含量をLC-MSを用いて分析した結果、Cy 3-GlcがCy 3-Galに比べて、吸収されやすいことが明らかになった。一方、腸内に残りやすいCy 3-Galは、腸内細菌相を変化させ、脂質代謝改善に有効に機能する可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、ツツジ科スノキ属に分類される栽培種のブルーベリー(8品種)、クランベリーおよび自生種5種、並びにバラ科キイチゴ属の栽培種(ラズベリー17品種およびブラックベリー2品種)および自生種4種と、初年度にもかかわらず多種類の種および品種の果実を材料とし、果実に含まれる成分および抗酸化機能性を、様々な項目について調査することができた。これは、研究の前年度までに、ある程度材料のサンプリングを終えていたことに加え、初年度に本科学研究費で購入した機器によって、分析実験が遅滞なく行えたことによる。この調子で研究を継続できれば、次年度はさらに多くの情報が得られ、各種抗酸化成分と抗酸化能との関連を細かく解析できるものと考えている。また、ラットを用いた実験では、果実色素の種類の差が腸管における吸収量の違いに影響を及ぼすことを見出した。この知見に基づき、次年度は、アントシアニンの種類に基づくラット生体内における抗酸化機能性発現機構の差異を明らかにできるものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
ツツジ科スノキ属およびバラ科キイチゴ属については、前年と同様の調査を継続して行い、果実の成分および抗酸化能に関する年次間変動を明らかにする。加えて、スイカズラ科のハスカップ、ブドウ科のヤマブドウおよびバラ科のハマナスについて、前年度に多数の野生株から果実を採取し終えており、これを使って抗酸化能およびそれと関連のある成分について、分析実験を行う。特に、ヤマブドウおよびハマナスについては北海道内各地に自生する多数の個体から果実をサンプリングしており(ヤマブドウは200株超)、これら野生種の果実に含まれる成分の遺伝的多様性(変異幅の広さ)や地域特性について明らかにする予定である。抗酸化能の評価については、DPPHラジカル補足活性、ORACおよびESRスピントラップ法を用いる分析を継続して行い、各種ラジカルの捕捉能と含有成分との関係解明を目指す。また、ラット腸管のアントシアニン吸収実験においては、吸収動態を経時的に調査するとともに、餌にアントシアニンを練り込んで経口給餌した場合の吸収量の変化についても調査を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度にプラハ(チェコ)で開催される国際学会で発表を予定しており、参加費としての相当額を次年度に繰り越した。26年度に実施予定の研究予算が不足するのを防ぐためである。 平成26年度にプラハ(チェコ)で開催される国際学会 (14th International NUTRITION & DIAGNOSTICS Conference, September 2 - 5, 2014) で発表を予定しており、参加費および旅費として使用する。
|