1. 自発休眠導入期の花芽における植物ホルモン量をLC-MS/MSを用いて分析した結果、低温蓄積に伴い、統計的に有意ではないものの、ABAの増加、GA1、GA19、GA20の増加、GA8の減少およびIAAの増加が認められた。低温遭遇時に一時的な温度上昇を行う変温処理を行った際には、GA1、GA20、IAAの増加とGA8の減少とが抑制されていた。 2.休眠芽の自発休眠期における低温蓄積と植物ホルモン関連遺伝子や休眠関連のMADS遺伝子について発現解析を行った結果、発現量が異なる傾向が認められた。すなわち、Dormancy-Associated MADS-Box (DAM)遺伝子であるPpMADS13-1、およびPpMADS13-2の発現は300CHの低温蓄積時に増加しており、600CHでは低下していた。また、ABA生合成酵素のNCEDや、ABA代謝酵素遺伝子のCYP707Aも低温遭遇期に増加していた。さらに、IAA合成に関わるYUC7遺伝子や、GA代謝に関わる遺伝子発現に違いが認められた。これらの遺伝子発現は、変温処理を行った際には、発現量が恒温区と異なっており、そのことが、植物ホルモン量の変化となり、休眠打破が遅延することが示唆された。 3.他発休眠期のニホンナシ花芽にシアナミド処理を行った際の植物ホルモン量を行った結果、休眠打破がシアナミド処理を行い萌芽が促進された芽において、GA4の一時的な増加が認められた。また、サイトカイニンであるトランスゼアチン量が処理を行っていない対照区で増加していたのに対し、シアナミド処理区では増加が認められなかった。
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