研究課題/領域番号 |
25292020
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
米森 敬三 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10111949)
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研究分担者 |
神崎 真哉 近畿大学, 農学部, 准教授 (20330243)
佐藤 明彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (30355440)
山根 久代 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (80335306)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 園芸学 / 植物 / ゲノム / 甘渋性 / タンニン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中国の完全甘ガキ‘羅田甜柿’に存在する果実中でのタンニン蓄積を抑制する機能を持つ特異な優性遺伝子(CPCNA遺伝子)の同定を目指すとともに、カキ果実でのタンニン蓄積に関与するAST遺伝子の同定とその比較機能解析も目的としている。昨年度はこれまでに構築した‘羅田甜柿’が有するCPCNA遺伝子に連鎖するAFLPマーカーが、交雑親が異なる場合でも有効であること、また、二倍体の近縁野生種であるマメガキ(D. lotus)にもこれらAFLPマーカー領域が存在することが明らかとなった。これまでの実験結果から、CPCNA遺伝子はRO-5とRO-6のAFLPマーカー間に存在しているものと仮定していたので、本年度はこれらのマーカーを利用し、マメガキのBACライブラリーを利用して、RO-5とRO-6のマーカーから構築したプローブを用いてBACクローンをスクリーニングし、マメガキを用いた遺伝子座同定の可能性を検討した。特に、スクリーニングによって得られたクローンのエンドシークエンスでマメガキの雌個体のみに存在するSNPsを発見したため、これを利用してマメガキ同士の交雑個体集団を解析し、このマーカー間の距離を推定することを試みた。しかしながら、この両者のマーカー間に連鎖関係がないと考えられる結果が得られ、用いたプローブのシークエンスの確認とマメガキのゲノムライブラリーを利用したCPCNA遺伝子単離の可能性を再検討する必要性が生じている。 一方、カキ果実でのタンニン蓄積に関与するAST遺伝子に関しては、これまで構築した甘渋性連鎖マーカーによるマメガキBACクローンを用いた解析が有効であることが示され、順調にBACコンティグが構築されており、これまで仮定していたAST遺伝子座の存在位置が誤りであったことが明らかになるとともに、その位置決定のためのBACコンティグ構築が順調に進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マメガキのBACクローンを用いた‘羅田甜柿’に存在する、果実中でのタンニン蓄積を抑制する機能を持つ特異な優性遺伝子(CPCNA遺伝子)の同定の可能性を否定するようなデータが得られたことは、今後の実験計画を修正する必要が生じたことを意味しており、この点では今後、当初の実験計画から遅れる可能性が出てきた。しかしながら、この実験結果は精査する必要があり、現時点では完全にこの方法が否定された訳ではない。また、カキ果実が有するタンニン蓄積に関与するAST遺伝子の同定に関しては、マメガキのBACクローンを用いた解析手法が有効であることが確かめられ、これまでの実験結果の誤りの発見、また、その遺伝子座同定に向けた順調なBACコンティグの構築など、計画は順調に進捗している。このため、全体としては、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、マメガキのBACクローンを用いた‘羅田甜柿’に存在する、果実中でのタンニン蓄積を抑制する機能を持つ特異な優性遺伝子(CPCNA遺伝子)の同定の可能性の有無を確実にする。また、もしこの可能性が完全に否定された場合を想定し、これまでと別の方向からのCPCNA遺伝子単離のアプローチとして、‘羅田甜柿’に日本のPCNA品種を交雑した集団で得られたスーパー甘ガキ果実(日本の完全甘ガキ形質を示す劣性のast遺伝子のみと中国の完全甘ガキ形質を示すCPCNA遺伝子を合わせ持つ遺伝子型)とCPCNA遺伝子を持たない日本タイプの完全甘ガキ果実でのRNA-seq解析を実施することで、CPCNA遺伝子が特異的に示す発現を明らかにし、その遺伝子機能を考察する。また、このスーパー甘ガキとCPCNA遺伝子を持たない完全甘ガキ形質を示す果実のタンニンの分子量分布とタンニン細胞の形態を調査し、タンニン生合成過程とタンニン細胞へのタンニン蓄積過程の差異に関しての知見を得る。さらに、カキ果実でのタンニン蓄積に関与するAST遺伝子の同定とCPCNA遺伝子との機能比較に向けて、マメガキBACクローンを用いたスクリーニングとそのクローンの解析を進め、日本の完全甘ガキの交雑集団を用いてその遺伝子座の同定をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はマメガキのBACクローンを用いた‘羅田甜柿’に存在する、果実中でのタンニン蓄積を抑制する機能を持つ特異な優性遺伝子(CPCNA遺伝子)の同定を計画しており、スクリーニングにより得られたBACクローンのシークエンス解析のための経費として予定していた。しかしながら、前述のように、このBACクローンを用いた解析の可能性を再度確認する必要が生じたため、このシークエンスに予定していた経費が次年度への使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
BACクローンによるCPCNA遺伝子の同定が確認された場合は、当初の予定通り、そのシークエンス解析の経費の一部として使用する。また、次年度にこれまでと異なるアプローチ(スーパー甘ガキのRNA-seq解析)を計画しているため、この経費の一部としても使用する予定である。さらに、研究の効率化のためにリサーチアシスタントの採用を検討しており、採用した場合はこの経費の一部としても使用する。
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