研究課題/領域番号 |
25292025
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
大宮 あけみ 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 花き研究所花き研究領域, 上席研究員 (50355715)
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研究分担者 |
光田 展隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 主任研究員 (80450667)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | クロロフィル / 転写因子 / 代謝制御 / 花色 |
研究実績の概要 |
シロイヌナズナの転写因子のみで構成されたライブラリーを用いたイーストワンハイブリッドにより、クロロフィル代謝の鍵酵素遺伝子の発現を制御する転写因子群のスクリーニングを行った。その結果、クロロフィルの分解において重要な役割をはたすSGR1、SGR2およびNYC1のプロモーター領域に共通に結合する転写因子候補を獲得した。得られた転写因子は、これらのプロモーター領域に結合することをin vivo(酵母)およびin planta(シロイヌナズナ)で確認した。この転写因子の過剰発現体は、野生株や機能抑制体と比較して植物体は小さく、葉の黄化が早かった。マイクロアレイ解析を行った結果、過剰発現体では野生株と比較してNYC1, SGR1 及びSGR2の他に、老化関連遺伝子の発現が顕著に高かった。また、機能抑制体では暗処理によるクロロフィルの分解が抑えられ、老化が遅延した。以上の結果から、得られた転写因子はクロロフィル分解関連遺伝子の発現制御だけでなく老化関連遺伝子の発現を制御することにより、老化に関与していると考えられた。クロロフィル生合成の鍵酵素であるCHLH、CHLI、PORA、PORC、CRDについてもスクリーニングを行い、プロモーター領域に結合する転写因子候補を獲得した。 キクの緑花品種および白花品種を材料にマイクロアレイ解析を行い、組織のクロロフィル量と相関して発現が変動している遺伝子の探索を行った。緑色花弁ではクロロフィル生合成系酵素遺伝子の発現が白色花弁よりも全体的に高い傾向にあった。分解系の遺伝子は葉よりも花弁で顕著に高かったが、緑色花弁と白色花弁で分解系遺伝子の発現に大きな差はなかった。以上の結果から、キクの緑色花弁では白色花弁よりも生合成活性が高いことが、クロロフィルを蓄積している要因の一つであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに、シロイヌナズナのクロロフィル分解関連遺伝子NYC1、 SGR1およびSGR2のプロモーター領域に共通に結合する転写因子候補について機能解析を行い、得られた転写因子がクロロフィルの分解や老化に関与していることを示すことに成功した。また、生合成経路で働くいくつかの鍵酵素についてもスクリーニングを行い、転写因子候補を獲得することができた。キクにおいても組織のクロロフィル量と相関して発現が変動する転写因子遺伝子を複数同定した。以上の結果から、26年度は当初の計画通りに研究を推進し、一定の成果を上げたことから、順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
NYC1、NOLおよびSGRについてはプロモーター領域に結合する転写因子候補を獲得し、機能解析によりクロロフィルの分解及び老化に関与していることを明らかにすることができたので、これらのデータをなるべく早い時期に論文として公表する。生合成酵素遺伝子のプロモーター領域に結合する転写因子候補について、過剰発現体や機能抑制体を用いて機能解析を進める。さらにクロロフィルの分解に働く酵素PPH、PAO、RCCRおよびCYP89A9、クロロフィルサイクルで働く酵素CAOおよびHCARについても現在スクリーニングを行っており、プロモーター領域に結合することを確認できた転写因子について、順次機能解析を進める。また、シロイヌナズナにおいて獲得した転写因子候補の、カーネーションやキクにおけるカウンターパートを探して発現解析を行い、植物共通に存在するクロロフィル代謝制御のメカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度行う予定のマイクロアレイ解析において、一部のサンプル調整が間に合わず27年度に繰り越しになった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度は最終年度のため、予算の大半を試薬やプライマー、マイクロアレイ用チップ等、消耗品の購入に使用し、機械の購入や研究補助員の雇用は行わない。また、成果の発表のための旅費及び論文投稿経費に45万円を計上した。
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