研究課題/領域番号 |
25292027
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
森口 卓哉 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所栽培・流通利用研究領域, 上席研究員 (80343945)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ニホンナシ / 休眠 / DAM遺伝子 / シグナル伝達 |
研究概要 |
DAMの発現はナシの自発休眠導入に伴い上昇し、覚醒とともに減少する。このようにDAMの発現パターンは休眠相と対応することから、DAMの発現変化を引き起こす上流因子、そしてDAM自身の発現制御機構を明らかにする。さらに、DAMの発現変化が影響を与える下流因子について知見を得る。 DAMと上流因子と想定されるCBFの相互作用について、ルシフェラーゼ活性を指標にin vitro(タバコの葉)で調べた。その結果、DAMの上流にCBF蛋白質が作用することが明らかとなった。さらに、上流配列のどの部分にCBFが作用するかをChIP-qPCRにより明らかにした。DAMの上流にはCBFが作用するモチーフがあるため、相互作用が推察されていたが実験的に初めて証拠を示すことができた。また、計画を前倒しして、DAM自身の制御機構を明らかにするため、i)自発休眠相の変化に伴うDAMのプロモーター領域のメチル化状態の変化と、ii)DAMに関わるヒストン修飾について解析した。その結果、i)DAMのプロモーター領域のメチルか程度は低く、自発休眠相の変化に対応した変化を示さなかった。ii)ヒストン修飾に関しては、ヒストンH3のリジン4番のトリメチル化が休眠覚醒に向かって低下した。ヒストンH3のリジン4番のトリメチル化は一般に遺伝子の転写を誘導することから、この修飾が低下することはDAM遺伝子が休眠覚醒後に発現が低下する事実と一致していた。一方、遺伝子の転写を抑制に関わるヒストンH3のリジン27番のトリメチル化は休眠前後で変化がなかった。モモではヒストンH3のリジン27番のトリメチル化が休眠覚醒に向かって高まることが報告されているが、同じバラ科でも制御機構が異なっていた。今回、新たにコアヒストンの一部が、H2A.Zに置き換わっている時に、DAMの発現高いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度は、DAMと上流因子と想定されるCBFとの関係を明らかにすることを計画したが、それに加えて、平成26年度実施予定であったDAM自身の発現制御機構についても解析した。このように前倒しで計画を進めたため、「当初の計画以上に進展している」と判定した。
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今後の研究の推進方策 |
DAMとCBFの関係を一過的なレポーターアッセイにより解析したが、本年度はDAMの上流配列の長さを変えて、ルシフェラーゼ活性を指標にin vitro(タバコの葉)で解析した時に、CBF蛋白質の結合が認められなく上流配列の長さ(部位)を特定する。この結果を既に得ているChIP-qPCRの結果と照合する。また、平成27年度計画であるDAMの下流因子とされるFTとの関係について、一過的なレポーターアッセイにより解析する。さらに、当初の予定には含まれていないが、DAMの下流因子を網羅的に解析するために、抗DAM抗体を用いたChIP-Seqを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定より効率的に研究を推進することができた。また、研究の過程で、DAMのChIP-Seq解析の必要性を強く感じたため、本年度の未使用額を次年度の繰り越して、重点的に解析することとした。 DAMが影響を及ぼす下流遺伝子を網羅的に明らかにすべく、ChIP-Seq解析の委託とデータ解析のための高度な知識を有した契約研究員の雇用にする使用する予定である。
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