研究課題/領域番号 |
25292028
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中屋敷 均 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50252804)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 植物保護 / ヒストンメチル化 / エピジェネティクス |
研究概要 |
イネいもち病菌(Magnaporthe oryzae)は、稲作における最も深刻な病害であり、稲作を中心とする日本農業にとって最重要植物病害の一つである。この菌は感染に際して、胞子から発芽管と呼ばれる菌糸を伸ばし、その先端に付着器という特殊な感染器官を形成し、そこで得られた膨圧により宿主の細胞壁を貫通して細胞内に菌体を送り込み、栄養授受関係を確立する。このような形態分化の過程には、クロマチンの変化を介した大規模な染色体レベルでの遺伝子発現制御の変化があると想定されるが、ほとんど知見が得られていないのが現状である。そこで本研究では、いもち病菌の病原性やそれに関与する付着器形成等の感染器官形成の過程で、ヒストンのメチル化を中心に、ヒストン修飾にどのようなダイナミックな変化が起こるのかを包括的に明らかにすることを目的とした。本年度得られた成果は以下の通りである。 ① イネ科植物いもち病菌の病原性に最も大きな影響を与えているヒストンメチル化は、ヒストン3リジン4(H3K4)におけるメチル化であり、それを担う遺伝子はHMT4である。 ② H3K4me2/me3メチル化は、いもち病菌の感染器官形成に伴ってダイナミックに変動しており、その集積は全般的な傾向からすると遺伝子の発現誘導と相関している。 ③ しかし、一方、HMT4破壊株における遺伝子発現の調査によると、野生株では通常発現が抑制されている遺伝子が、発現増高している例が非常に多く認められ、HMT4が直接、間接的に遺伝子発現の抑制にも寄与していることが示唆された。 ④ 全いもち病菌の約1/3程度の遺伝子が、直接、間接的にHMT4に依存して発現調節されており、HMT4の制御下にある遺伝子には、付着器形成や植物細胞壁分解酵素等、いもち病菌の病原性にとって重要なものが含まれていた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に研究成果が得られており、計画通りに研究は進んでいる。平成25年度に計画した項目として、1.感染器官形成に応じたゲノムワイドなH3K4me2修飾のダイナミズム解析、2.感染器官形成に関与する新たなヒストンメチル化修飾部位の検出、3. H3K4me2修飾により制御される遺伝子群の同定、4. ヒストン脱アセチル化酵素の破壊株の作製とその性格付け、を挙げたが、4の項目については思うように破壊株が得られていないが、他は完全に終了しており、平成26年度以降に予定していた内容に進んでいるため。
|
今後の研究の推進方策 |
予定通りに進めるつもりであるが、ヒストン脱アセチル化酵素の破壊株については、取得が難しいことと、他の研究グループから類似の発表があったため、研究の打ち切りも検討している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H25年度に使用予定にしていた次世代シークエンサーを利用した実験が、他の実験結果を参照にしてから行った方が、経費を無駄遣いしなくてよいことが想定されたため、H26年度に行うことにした。 H25年度から延期された次世代シークエンサーを用いた解析に使用する予定である。
|