研究課題
イネいもち病菌(Magnaporthe oryzae)は、稲作におけるもっとも深刻な病害であり、稲作を中心とする日本農業にとって最重要植物病害の一つである。この菌の宿主植物への感染過程では、宿主植物上に付着した胞子が発芽管と呼ばれる菌糸を伸ばし、その先端に付着器という特殊な感染器官を形成する。付着器はメラニン化した強固な器官であり、そこで得られた膨圧により宿主の細胞壁を貫通して菌体を送り込み、侵入菌糸を形成して栄養授受関係を確立する。このようのいもち病菌の、感染過程における様々な感染器官形成にはクロマチンの変動を介した大規模な染色体レベルの遺伝子発現制御があると想定されるが、ほとんど知見が得られていないのが現状である。そこで本研究では、このいもち病菌の感染器官形成におけるヒストン修飾にどのようなダイナミックな変化が起こるのか、包括的に明らかにすることを試みている。本年度に得られた主な知見は下記の通りである。1.いもち病菌の感染器官形成に最も大きな影響を与えるH3K4のメチル化を担うMoSET1の変異体では、活性化される遺伝子と抑制される遺伝子がある。一般にH3K4メチル化は、遺伝子の活性化と関与すると考えられており、その変異体で遺伝子の発現が高まるという結果は、一見、矛盾する。MoSET1のChIP-seq解析とバイオインフォマティクスを用いた解析より、これはMoSET1が遺伝子のサプレッサーの発現を制御している間接的な影響と結論付けられた。2.新たにいもち病菌においてH3K27meの修飾を担うMoKMT6を同定した。MoKMT6の変異体では、胞子形成が顕著に抑制され、付着器形成率や宿主植物における病原性も有意に低下しており、H3K27のメチル化も本菌の病原性に影響を与えていることが明らかとなった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLOS Genetics
巻: 11 ページ: e1005385
10.1371/journal.pgen.1005385
http://www.ans.kobe-u.ac.jp/jyukensei/e-bio/guide/structure.html