研究課題
感受性誘導阻害により、植物の自然免疫を活用する青枯病防除技術開発の基盤研究として、青枯病感受性誘導機構を網羅的に解明することを目的とする。その目的を達成するために、第一に、青枯病菌のⅢ型分泌系構築機構を解明するとともに、Ⅲ型分泌系を介して宿主植物内に分泌する、植物免疫阻害による感受性誘導を行うエフェクターの同定・機能解析を行う。第二に、宿主植物における青枯病感受性誘導シグナル伝達系を解明する。これらの青枯病感受性誘導に関わる青枯病菌-宿主植物相互作用の結果を基に、青枯病感受性感知システムを開発し、青枯病感受性誘導機構を網羅的に解明する。その中で、平成27年度は、(1)青枯病菌日本株における青枯病感受性誘導エフェクターの機能解析と(2)青枯病感受性誘導シグナル伝達系の解明 を実施した。とくに、エフェクター遺伝子の発現を制御する転写制御因子HrpGの、植物に感染時の機能解析を行い、HrpGタンパク質は青枯病菌が植物感染時にリン酸化されることを明らかにした。アミノ酸点変異を導入しリン酸化されなくなったHrpGタンパク質は、青枯病菌細胞質内で分解され、リン酸化HrpGタンパク質は分解されないことを明らかにした。リン酸化HrpGタンパク質により、Ⅲ型分泌系構成タンパク質ととともにエフェクター遺伝子の発現が誘導され、植物感染時に特異的にエフェクターを、Ⅲ型分泌系を介して分泌することが明らかとなった。さらに、Nicotiana benthamianaの植物免疫シグナル伝達系において起点となるフォスファチジン酸と結合能力を有するSucrose non-fermenting related kinaseが、植物免疫シグナル伝達系に関与することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
青枯病感受性誘導に関わる青枯病菌日本株のエフェクターの網羅的同定にはいたらなかったが、エフェクター遺伝子の発現制御機構の全容解明に近づいた。さらに、先行研究において、細胞間隙侵入後の、宿主植物上におけるバイオフィルム形成とその機構の解明がすすんだことにより、青枯病菌は細胞間隙に侵入後、宿主植物の細胞表面に固着し、Ⅲ型分泌系を構築し、エフェクター分泌を宿主細胞内に分泌し、植物免疫を阻害することで、宿主細胞表面で増殖し、その増殖によりクオラムセンシングが起動し、バイオフィルム形成を行うことと、一連の侵入過程に関わる青枯病菌内でのシグナル伝達系を明らかにされた。これらの結果から、細胞間隙侵入後の宿主植物表面でのバイオフィルム形成時の、エフェクターの宿主細胞内への注入と作用時期の推定を行うことができ、青枯病感受性感知システムの構築に有益な知見を得ることができた。
本研究の目的である(1)青枯病菌のⅢ型分泌系構築機構を解明するとともに、Ⅲ型分泌系を介して宿主植物内に分泌する、植物免疫阻害による感受性誘導を行うエフェクターの同定・機能解析、および(2)宿主植物における青枯病感受性誘導シグナル伝達系の解明 それぞれを推進するとともに、これらの結果を基に、青枯病感受性誘導に関わるに関わる青枯病菌-宿主植物相互作用をomics解析により解明する。これらの青枯病感受性誘導に関わる青枯病菌-宿主植物相互作用の結果を基に、青枯病感受性感知システムを開発し、青枯病感受性誘導機構を網羅的に解明する。
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