研究課題/領域番号 |
25292030
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古屋 成人 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10211533)
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研究分担者 |
土屋 健一 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40150510)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 内生細菌 / 接ぎ木 / 青枯病 / PCR-DGGE / 細菌群集構造 / 生物的防除 |
研究実績の概要 |
トマト接ぎ木癒合組織内に培養可能な細菌が約百万程度生息していることを明らかにした。またこれら細菌の移動は穂木である上部方向よりも台木がある下部方向に移動していることが、癒合組織部位を中心にした分画実験や蛍光遺伝子を導入した組み換え細菌を利用することにより明らかとなった。癒合組織内に生息する培養可能な細菌を無作為に約500菌株分離保存を行い群集構造の解析に供試した。全ての分離細菌について16S rDNAの塩基配列に基づいた属レベルでの推定と系統解析を実施した。その結果、接ぎ木部分ではとくにグラム陽性細菌であるMicrobacterium 属や陰性細菌であるSphingomonas 属が優占的であり、Bacillus 属、Cellulomonas 属、Methylobacterium 属も高頻度で検出された。さらに生物的防除活性発現に密接に関連する各種の性状や特性について調べた。分離した内生細菌は全てタバコ過敏感反応が陰性であり、ナス科植物青枯細菌病菌に対して約20%の分離細菌が抗菌活性を示した。さらにin vitroでの青枯病発病抑制実験においてMicrobacterium 属やSphingomonas 属の内生細菌が発病を顕著に抑制すると同時に汚染土壌における実験でも高い生物的防除効果を示すことが明らかとなった。一方、難培養細菌を含む全内生細菌の実態を解析する目的で、PCR-DGGE法の適用可能性について検討を加えた。16S rDNAのPCR増幅産物をDGGEに供試する場合に障害となる葉緑体やミトコンドリアの影響を軽減するために、プライマーの設計やPCR反応の適切な条件設定などについて詳細な検討を展開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トマト接ぎ木癒合組織内に生息する細菌の量やその群集構造についての解析を進め同時に生物的防除発現に関連する性状解析により、世界的にも被害が深刻であるナス科植物青枯病に対して有望な生物的防除素材菌となりうる細菌株の選抜などは当初の実験計画通りに展開した。しかしながら難培養細菌を含む全細菌を解析するためのPCR-DGGE法の適用可能性について有効な条件設定に時間がとられたが、解析可能となる実験条件が現在整ったことから、本法による内生細菌構造と生物防除効果発現との関係について検討を図っている。
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今後の研究の推進方策 |
ナス科植物青枯病に高い生物的防除活性を示す内生細菌種を利用した、より実用的な生物的防除法を可能とするために、種子処理法の検討や接ぎ木作業時における簡易的な接種法の検討を加え、最終的には圃場実証試験を行う。一方、PCR-DGGE法による有効な条件設定が確立したことから、今後は全内生細菌の構造の変動や病原細菌が感染した場合や生物的防除素材菌を接種した場合のそれぞれの細菌の追跡と細菌構造との関連性などの解析を展開するすることにより、生物的防除効果発現の機序について新たな知見が得られることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
トマト接ぎ木癒合組織に生息する培養困難な細菌を含む全細菌の群集構造をPCR-DGGE法により解析する計画で実験を展開しているが、葉緑体やミトコンドリアの影響をできるだけ除去するための手法を確立するのに予定以上の時間を費やすことになった。現在、PCR-DGGE法の適切な解析条件が設定でき実験を展開中であるが、本解析に必要なゲル作製や酵素などの消耗品の購入が今後必要となる.
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの研究成果に基づき、ナス科植物青枯病の生物的防除に有望な選抜素材菌を接ぎ木切断面に処理した場合の、素材菌の追跡と内生細菌の群集構造との関係について検討する。同時に感染した青枯病菌の変動と内生細菌との相互関係についても,PCR-DGGE法に基づき経時的に解析を加える予定である。
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