研究実績の概要 |
白紋羽病菌の病原力を低下させるマイコウイルスであるメガビルナウイルス(RnMBV1)感染により変動する白紋羽病菌の遺伝子を解析することで白紋羽病菌の病原性に関する機構を明らかにすることを目的とする。昨年度までにRnMBV1感染により変動する転写因子ホモログの抽出を行った。本年度はこれら転写因子ホモログの機能解析を行った。RnMBV1感染により発現が変動する転写因子ホモログのうち、特に変動が大きかった2遺伝子、cTF2(発現抑制)、cTF8(発現増加)について、それぞれRNAiベクターと過剰発現ベクターを作製した。ウイルスフリーの標準菌株であるW97へ各ベクターを導入し、発現抑制株(cTF2i)と過剰発現株(cTF8ox)を作出した。得られたcTF2i およびcTF8ox の菌株の生育を調べたところ、cTF2i 株の一部では生育の減少が確認されたが、それ以外の菌株は、ベクターコントロールと同程度の生育を示した。また、いくつかの菌株においてリアルタイムPCR により発現量を調べたところ、cTF2i株はcTF2遺伝子の発現が抑制され、cTF8ox株はcTF8遺伝子の過剰発現が確認された。以上の結果から、各遺伝子単独の発現変動は、白紋羽病菌の菌そう生育に影響を及ぼさなかった。 RnMBV1に含めた5種のマイコウイルスについて、RNAサイレンシング関連遺伝子RnDCL-2, RnAGL-1, RnAGL-2, RnRdRP-1, -2, -3, -4)の発現レベルをリアルタイムPCRで解析したところ、白紋羽病菌の病原力を低下させるRnMBV1やマイコレオウイルス3(RnMyRV3)の感染により、RnDCL-2, RAGL-2, RnRdRP-1, RnRdRP-2の発現上昇することが明らかとなった。これらの遺伝子の過剰発現体を作出したが、生育に顕著な変化は認められなかった。
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