研究実績の概要 |
ハダニ類722種73系統について、次世代シークエンサーによる大容量塩基配列解析(トランスクリプトーム解析; RNA-Seq)を行った。種ごとにde novoアセンブリを行い、100 bpのショートリードを繋ぎ合わせた長い配列(コンティグ)を作成した。ハダニ1種につき1万~3万本のコンティグが得られた。de novoアセンブリで作成したコンティグを用いて相同性検索(BLAST検索)を行い、73系統に共通する遺伝子を抽出した。さらに、共通遺伝子それぞれについてマルチプルアライメントを作成し、分子系統樹を推定した。得られた分子系統樹とアライメントを精査した結果から、明らかなパラログ配列を含む遺伝子が含まれていないことを確認し、系統解析に用いることのできるオーソログ遺伝子652個を決定した。73系統のハダニに共通するオーソログ遺伝子652個(塩基配列: 790,047 bp, アミノ酸配列: 264,133 aa)を用いて、分子系統解析を行なった。これらを用いて分子系統解析を行ったところ、従来の遺伝子領域(ミトコンドリアDNAおよび核rRNA遺伝子)に基づく系統樹と矛盾せず、かつほぼすべての分岐(67/70 nodes)が高いブートストラップ値で支持される系統樹が得られた。この系統樹では、供試した14属中4属が多系統になったことから、形態の類似性によって分類されている属が、分子系統樹上では必ずしも単系統にならないことが分かった。
|