研究課題/領域番号 |
25292037
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
瀬尾 茂美 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物・微生物間相互作用研究ユニット, 主任研究員 (80414910)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 抵抗性誘導物質 / カロテン / 害虫抵抗性 / ジャスモン酸 |
研究概要 |
近年、植物が本来もつ病害抵抗性を誘導する物質、プラントアクティベーター が注目されている。既知の抵抗性誘導物質は、病害微生物を対象としており、害虫を対象とした抵抗性誘導物質の報告は全くと言ってよいほどない。害虫種に有効な抵抗性誘導物質を探索するために植物病害抵抗性反応一形態である過敏感反応に着目し、過敏感反応が誘起されたタバコ葉から候補物質としてカロテン関連物質を単離・同定した。植物の病害虫抵抗性におけるカロテン関連物質の役割についてはよくわかっていない。そこで本研究では、カロテン関連物質の病害虫スペクトラムや作用機作等の解明研究を通じて、病害虫抵抗性に果たすこれら物質の役割について明らかにするとともに、病害防除技術の開発に資する。 初年度は病害虫スペクトラムの研究を重点的に進めた。カロテン関連物質を処理したトマト葉に、汁吸性害虫であるナミハダニを接種し、生存率と産卵数を調べたところ、濃度依存的な生存率と産卵数の低下が観察できた。また、食植性害虫であるハスモンヨトウについても検定したところ、本害虫種でも生存率の低下が認められた。カロテン関連物質にはこれら害虫に対する直接的な殺虫活性は示さなかったことから、見られた効果は本物質を処理することによって植物で引き起こされた何らかの防御反応の結果であることを示唆した。次いで、カロテン関連物質の作用機作を明らかにするための足掛かりとして、本物質によりその発現が誘導される遺伝子の同定を試みた。カロテン関連物質を処理したトマト葉における種々の防御遺伝子の発現を調べたところ、ジャスモン酸応答性遺伝子群の発現が強く誘導されることが判明した。これらの結果は、トマトにおいてカロテン関連物質はおそらくジャスモン酸シグナル伝達系を活性化することによりナミハダニとハスモンヨトウに対する抵抗性を誘導する働きがあることを示唆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は病害虫スペクトラムの実験を重点的に行う計画を立てた。実際に、汁吸性害虫(ナミハダニ)と食植性害虫(ハスモンヨトウ)に対して効果を示すことが確認できた。また、作用機作の解析については、研究対象としている物質がジャスモン酸の上流で機能していることを示唆するデータが得られ、今後の解析に役立つ知見が得られた。このように全体的には初年度の計画はおおむね順調に進展したと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
カロテン関連物質が2つの異なる摂食様式の害虫に対して抵抗性誘導活性を示したことから、本物質は広範囲の害虫に対して効果を示す可能性が示唆された。そこで、今後は、アザミウマ等の別の害虫を用いた検定を行い、その有効性の範囲を検証する。ジャスモン酸との関連が示唆されたが、現段階では証拠としては不十分である。そこで、ジャスモン酸との関係を証明するためにシロイヌナズナのカロテン関連変異株やジャスモン酸関連変異株等を用いた抵抗性検定等を行う。
|