今年度は、前年度までに得られた成果を踏まえ、単離・同定したカロテン関連物質の病害虫スペクトラムの解析及び当該物質の作用機作・生理学的解析を行った。病害虫スペクトラムの解析については、カロテン関連物質の構造活性相関に関する知見を得ることを目的として、類縁化合物の病害虫に対する抵抗性誘導能の有無をトマト等を用いて検証した。具体的には、市販品の複数の類縁化合物(β-cyclocitral等)について、トマト葉に処理し、重要害虫であるミカンキイロアザミウマを接種し、生存数を計測したところ、ある特定の化合物処理区で対照区と比較して有意に生存数の低下がみられた。一方、タバコモザイクウイルスとタバコの組み合わせを用いたウイルス抵抗性の誘導効果について調べたが、本ウイルスについては抵抗性誘導活性は認められなかった。作用機作・生理学的解析については、害虫加害などのストレス付与後の内生カロテン関連物質を定量するとともに、病害虫ストレス応答に関わるジャスモン酸等植物ホルモンの量的変動も同時に調べた。その結果、ハスモンヨトウ加害後、6時間以内にカロテン関連物質の内生量の増加が認められた。ほぼ同時にジャスモン酸の増加も認められた。これらの結果は、カロテン関連物質は害虫に対する抵抗性のシグナル伝達物質として機能している可能性を示す。
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