アーバスキュラー菌根菌との菌根共生、および、根粒菌バクテリアとの根粒共生を制御する遺伝子は、根粒菌・菌根菌の感染受容化を制御する「共通シグナル伝達経路」の解析を基盤として発展してきた。我々は、この「共通シグナル伝達経路」に属する共生遺伝子について、さらに詳細な解析を行った。
(1)共通シグナル伝達経路の中枢制御因子であるCCaMKに機能獲得型変異を導入したGOF-CCaMKを作成し、デキサメタゾン処理によりGOF-CCaMKを発現誘導する系を構築した。同系を用いた実験から、菌根共生最初期に発現誘導される新規遺伝子群を複数選定した。このうち、2つの遺伝子産物は、菌根共生成立時に、菌根菌の細胞内共生器官である「樹枝状体」に局在することが明らかになった。この成果については、現在、論文投稿中である。さらに、split ubiquitin YTH法により、これら2つの因子と相互作用する因子を複数同定し、これら相互因子の菌根共生への関与を検証する研究に着手した。
(2)共通シグナル伝達経路に属する遺伝子群のうち、カルシウムスパイキング起動を制御する因子群~カリウムイオンチャネルであるCASTORとPOLLUX、および、核膜孔を構成するヌクレオポリンであるNup133、Nup85、Nena~は核膜上に存在する。そこで、根粒共生能を指標として、これらの因子間の機能的上位下位性を解析した結果、ヌクレオポリン因子が、CASTORおよびPOLLUXの機能発現に影響を与えていることを明らかにした。この成果については、現在論文投稿準備中である。
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