研究課題/領域番号 |
25292044
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
五味 勝也 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60302197)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カーボンカタボライト抑制 / 転写因子 / 膜輸送体 / エンドサイトーシス / ユビキチン / アレスチン / 細胞内局在 |
研究実績の概要 |
GFP融合CreAの細胞内局在観察により、グルコース培地では核内に局在するのに対しマルトース培地では核内には局在しなかったが、CreA内の推定核外排出シグナルであるロイシンをアラニンに置換したところ、マルトース培地に移した場合でも核内に局在した。野生型CreAと比較してマルトース存在下での安定性がやや高くなったことから、CreAはマルトース存在下で核内から細胞質に移行し、細胞質で分解されることが示唆された。CreAのユビキチン化は現在までのところ検出されておらず、これまで提唱されていたモデルとは異なり、CreAは直接ユビキチン化/脱ユビキチン化によって制御されているのではなく、何らかの因子を介してリン酸化と核外移行の制御を受けているという新規の制御機構の存在が考えられる。Snf1キナーゼオーソログ(SnfA)破壊株をマルトース培地に移した際のCreAの安定性と局在を調べた結果、野生株と比較して安定性は高くなったものの、局在変化への影響は観察されなかったことから、核外移行のためのリン酸化にSnfAは関与しない可能性も示唆された。さらに、CreAのC末端付近に存在する20アミノ酸の領域が炭素源依存的な分解に必要であることが示された。 ユビキチンリガーゼのアダプターであるCreDはグルコース存在下で速やかに脱リン酸化を受けること、このリン酸化部位が402番目と515番目のセリンであることを明らかにした。CreDのリン酸化部位変異株におけるGFP-MalPの細胞内局在解析により、515番目のセリンが脱リン酸化されることがMalPのグルコースによるエンドサイトーシスに重要であることを示した。CreDのPYモチーフ変異体におけるMalPの細胞内局在とHulA-WWWドメインとのプルダウン解析から、PPLY配列よりも2個のPXY配列の方が重要である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CreDのリン酸化部位の決定と515番目のセリンが脱リン酸化されることがMalPのグルコースによるエンドサイトーシスに重要であることが示され、CreDのPYモチーフのうちでもPPLY配列よりも2個のPXY配列の方がHulAとの相互作用に重要である可能性が示唆された。このように、膜輸送体MalPのエンドサイトーシスにおけるユビキチンリガーゼとアダプタータンパク質の機能の一端が解明され、研究計画通りおおむね順調に研究は進展していると判断できる。一方、CreAはグルコース存在下で核内に局在するのに対しマルトース存在下では核内には局在しない。CreAの推定核外排出シグナル変異により、マルトース存在下でも核内に局在し、野生型CreAと比較して安定性もやや高くなったことから、CreAはマルトース存在下で核内から細胞質に移行し、細胞質で分解されることが示唆された。CreAのユビキチン化は現在までのところ検出されておらず、これまで提唱されていたモデルとは異なり、CreAは直接ユビキチン化/脱ユビキチン化によって制御されているのではなく、何らかの因子を介してリン酸化と核外移行の制御を受けているという新規の制御機構の存在が考えられる。このリン酸化にSnf1キナーゼオーソログ(SnfA)の関与を考えたが、破壊株では野生株と比較してCreAの安定性は高くなったものの、局在変化への影響は観察されず、核外移行のためのリン酸化にSnfAは関与しないことが示唆された。このように転写因子CreAの制御には間接的にユビキチン化が関与している可能性が示唆され、新たなモデル構築の必要性が高まったことから、研究としては新展開が期待されるものの、進捗状況は総合的に「やや遅れている」と判断するのが妥当と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
膜輸送体であるマルトーストランスポーターMalPとユビキチン化修飾に関わるユビキチンリガーゼHulA、アダプター因子CreDとの詳細な共免疫沈降実験ならびにプルダウン解析を行う。MalPと同様グルコースによるエンドサイトーシスが起こる可能性のある糖(キシロース)のトランスポーターと逆にグルコースではエンドサイトーシスが起こらないアミノ酸トランスポーターについても解析を行う。一方、カーボンカタボライト抑制に関わる転写因子CreAの機能制御はリン酸化による核外移行、脱リン酸化による核内移行によって行われていることが予想される結果が得られたが、HulAおよびCreDの関与を確認するため、CreAとの共免疫沈降とプルダウン解析を行う。また、タグ化CreAを用いた共免疫沈降実験によってCreAと相互作用するタンパク質をスクリーニングすることにより、CreAのリン酸化・脱リン酸化に関わる因子を探索する。一方、CreAの脱ユビキチン化に関与すると考えられていたCreBの標的タンパク質を、ユビキチンプロテオーム解析などの手法により明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、従来の報告で提唱されていたモデルに基づいて、転写因子と膜輸送体のユビキチン化修飾が同一の制御マシナリーで行われているという仮定に立って研究計画をデザインし、それに沿って研究を行ってきた。しかし、本研究による解析が進展するに従い、当初のモデルでは説明できない現象が認められ、特に27年度になってから正しい制御機構として別のモデルが考えられる結果が得られてきたことから、この新たなモデルを証明するための詳細な解析を追加して行う必要が生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
当初仮定していたモデルとは異なり、CreAが直接ユビキチン化されることによって制御されているわけではない結果が得られ、未知の新たな機構解明の必要性が生じたことから、MalPのユビキチン化・脱ユビキチン化の機構の詳細解析に加えて、CreAに関する新規制御機構解明という重要な課題に取り組む。今後の研究の推進方策に記載されている内容の研究を遂行するために有効に予算を使用する予定である。
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