研究課題/領域番号 |
25292045
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北本 勝ひこ 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (20272437)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 麹菌 / 分泌 / セルファクトリー / 変異株 / オートファジー |
研究実績の概要 |
麹菌(Aspergillus oryzae)は、1リットル培養で数グラムという高いタンパク質分泌生産能力を持つ。このタンパク質高分泌能については、最近、ストレス応答、オートファジーなど分泌経路と直接には関係ないと思われていたことが関与していることがわかりつつある。そこで、下記のような多面的な細胞生物学的解析を行った。 1)オートファジー関連遺伝子(Aoatg9, Aoatg11, Aoatg26など)について、機能解析を進めた。2)近年、酵母や動物細胞で明らかにされつつあるER-Golgiを経由しない新規分泌経路に関するAcylCoA binding proteinのホモログ遺伝子(Aoacb1, Aoacb2)の解析を進め、シグナル配列をもたないAoAcb2が培養後期に培地中に分泌されることを明らかにした。3)小胞体のカーゴレセプターであるVip36とEmp47の麹菌ホモログ遺伝子の分泌生産に対する寄与を明らかにした。4)異種タンパク質高生産分泌生産株(AUT株)について次世代シーケンサーによる全塩基配列を決定し、責任遺伝子を見出した。当該遺伝子破壊株を作製し、異種タンパク質の生産性向上に関与していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オートファジー関連遺伝子(Aoatg9, Aoatg11, Aoatg26など)の機能解析が順調に進んだ。新規分泌経路については、糸状菌である麹菌でも存在することを強く示唆する結果を得た。また、小胞体のカーゴレセプターの発現を制御することにより異種タンパク生産を向上させることを示すことができた。異種タンパク質高生産分泌生産株の原因遺伝子は、複数あると考えられるが、少なくとも、そのうちの一つを特定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ER-Golgiを経由しない新規分泌経路については、欧米の糸状菌研究者もほかのカビで同様な研究を進めており、麹菌での詳細なメカニズムを調べる。 最近、産業微生物において、オートファジー制御による生産性の向上などの研究発表がなされるようになっており、今後とも、基礎生物学的な解析とともに、生産性への関与を調べる。また、次世代シーケンサーの登場により、古典的遺伝学が適用できない麹菌でも、変異遺伝子の特定する方法が確立されるようになったので、新たに、高分泌変異株のスクリーニングを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前々年度、次世代シーケンサーの依頼分析が遅れたために繰り越した額の相当額を繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は最終年度のため、新規分泌経路、オートファジー関連等の実験に使用予定である。また、新たに取得する変位株の変異点を次世代シーケンサーにより決定する。
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