麹菌(Aspergillus oryzae)は1リットル培養で数グラムという高いタンパク質分泌生産能力を持つ。このタンパク質高分泌能については、最近、ストレス応答、オートファジーなど分泌経路と直接には関連がないと思われていたことが関与していることがわかりつつある。そこで、下記のような多面的な細胞生物学的解析を行った。また、これらの分子生物学的解析を飛躍的に効率化する技術としてのゲノム編集技術の確立も試みた。 1)麹菌(Aspergillus oryzae)の核の自食作用の機構であるヌクレオファジーの解析を行い、一つの細胞に複数の核を持つ糸状菌のもつ特異なオートファジーのシステムについて解析を行った。2)麹菌(Aspergillus oryzae)のオートファジー関連タンパク質AoAtg26の局在解析を行い、EGFP-AoAtg26 はPAS,隔離膜およびオートファゴソーム膜に局在することを明らかにした。3)異種タンパク質高生産分泌生産株(AUT株)の次世代シーケンサーによる全塩基配列の決定により責任遺伝子として同定した遺伝子をautAと命名した。autA破壊株による生産性の向上は、AUT株と比べて低いことから、autA遺伝子の他にも変異が入っている可能性が考えられた。4)麹菌(Aspergillus oryzae)におけるCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術の確立に成功した。
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