複合培養は、申請者らが開発した抗生物質生産に適した共培養法である。放線菌とミコール酸を外膜に有する微生物(ミコール酸含有細菌)を共培養すると、放線菌が純粋培養時とは異なる抗生物質生産パターンを示す。複合培養法は本現象を用いた抗生物質探索に適した新規培養法である。 (1)次世代シーケンサーによるゲノムワイドな転写シークエンスによる複合培養時特異的発現遺伝子の同定。 昨年度に引き続き、次世代シーケンサーによるゲノムワイドの転写シークエンスを用いて、複合培養時に特異的に発現する遺伝子群の同定をおこない遺伝子の発現パターンの有意な差を検出したが複合培養と関連すると思われる遺伝子の特定には至っていない。 (2)複合誘導非応答変異株の作出と変異点解析 (1)のRNAseqの結果では複合培養時に多数の遺伝子の発現パターンが変化することがわかったが、経時変化において同調的に変化し、かつ機能が複合培養に関与していそうな遺伝子の特定までは至らなかった。そこで、変異株を用いた順遺伝学による解析を行うこととした。放線菌Streptomyces coelicolor A3(2)とミコール酸含有細菌Tsukamurella pulmonisの組み合わせの複合培養においてはS. coelicolorの赤色色素生産が誘導される。S. coelicolorに重イオンビームを照射することにより、赤色色素生産誘導を行わない変異株を取得し、その変異点を解析することにより複合培養に関与する遺伝子の同定を行った。現在約50株の変異株を取得することに成功しており、順次変異点解析のためにゲノムシーケンスを行う予定である。
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