研究実績の概要 |
pSN22のTraBは菌糸間でのDNA輸送に関与するDNAチャネルであり、主要伝達タンパク質とも呼ばれる。核磁気共鳴(NMR)を用いた構造解析により、TraBの一次構造が大きく3つのドメインに大別され、アミノ末端側から順に細胞膜への係留、モーター活性、DNAへの結合の各機能を果たすことを示唆するデータを得た。TraBが有する機能を分子レベルで解明することを目的とし、in vitro, in vivoの両面から解析を試みた。まずモータードメインの機能に着目した。このドメイン内には2種類のNTP結合モチーフが存在し、Walker typeはStreptomyces属を宿主とする他のプラスミド由来の主要伝達タンパク質と高い相同性を示す。我々はTraBがATPase活性を有し、その機能を担うためにはWalker typeが重要なのではないかと考え、仮説を確かめるため、Walker type内に点突然変異を導入した変異体TraB、及びWalker typeをそれぞれ異なるパターンで欠落させた部分欠失変異体を作製し、これらのATPase活性を野生型TraBと比較した。その結果、変異型TraBの活性値は野生型に比べて50%以下に低下する傾向が見られ、保存性が高くない領域の変異でも同様の傾向を示した。また、Walker typeを欠落させた部分欠失変異体の活性値も野生型と比較して著しい減少を示した。加えてATPase活性を低下させるような変異を導入した場合において接合伝達の不活化が顕著に見られることを明らかとした。これらの結果はTraBがATPase活性を有し、Walker typeモチーフ内の変異によりその活性が損なわれること、及びTraBのATPase活性減少が接合伝達機構の喪失に直接関与することを示している。
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