研究課題/領域番号 |
25292052
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
北田 栄 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (20284482)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | チューリンジェンシス菌 / 生理活性物質 / がん / トリバノソーマ / 微生物 / 毒素 / 感染症 |
研究概要 |
今回の研究課題では、Bt 菌株に潜在する生理活性タンパク質を特定がん細胞、病原体などに対する特異的な作用を指標に網羅的に検索し、その分子の同定、作用と機能の解析から、新しい毒素応用の基礎となる総合的研究を推進する。平成25年度ではBt菌の培養と処理、活性タンパク質を得るためのハイスループットな方法の確立を目指した。 Bt菌4740株から独立に生理活性物質を抽出した。具体的には、96 穴プレートを用いた方法を基本に、より効率的な実験方法を検討した。一方、この方法では独立した96 株を96穴プレートで処理するため、振盪培養装置の数と性能が実験の進行に大きく影響をあたえた。現在保有の機器では、96 穴プレート(ディープウエル)が同時に2 つまでしか培養できないため、培養できるBt 菌株は192 株である。Bt 菌栄養細胞の定常状態までの培養が3 日、胞子形成(結晶性タンパク質形成)には1 週間~3 週間必要であルことがわかった。おおむね192 株から結晶性タンパク質形成に15 日程度を必要とした。よって1ヶ月で約400 株、1 年で4740株のBt菌から抗がん性作用や抗トリバノソーマ作用を示す可能性がある生理活性タンパク質を抽出することができた。 このため、平成26年度以降はこれらの新規抗病原性タンパク質をスクリーニングする準備が整ったとともに、効率的なBt菌株の培養とタンパク抽出の新しい技術を確立した。ただし、研究計画に予定していたアルメニア共和国の研究機関が分離したBt菌の利用は国際MTAなどの手続きの関係で分用が遅れ、今年度はリファレンスサンプル株の25株が譲渡された。また、研究代表者は平成25年8月に1週間アルメニア共和国微生物保全センターほかの共同研究を視察し、国際研究プロジェクトに関して両者の合意書を取り交わした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度では、96 穴プレートを用いた方法を基本に、より効率的な実験方法を検討し実施し、本計画では1 年目10,000 株から上記の方法で毒素タンパク質を得ることを目的とそた。現在4740株のBt菌からの生理活性タンパク質の抽出が終了し、その一部を用いた抗がん作用と抗トリバノソーマ作用のスクリーニングを当初計画よりも実施し、すでに生物活性を示す菌株を複数発見している。この点は予定より順調に進んでいる。 一方、アルメニア共和国との国際共同研究は8月にスタートしたばかりで、研究サンプルの譲渡や相手国研究者の研究体制などから、今年度Bt菌の培養と生理活性物質の抽出は25種類に終わった。来年度以降も共同研究を協力に進め、Bt菌10,000 株からの新しい抗病原体活性物質の大規模検索とその作用を解析していく。
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今後の研究の推進方策 |
Bt 菌10,000 株から、以下の項目の新規抗病原性タンパク質をスクリーニングする。 抗がん性タンパク質→ヒトがん細胞:すい臓がん、肺がん、食道がん 各株のBt 菌から抽出したタンパク質を加え、がん細胞の障害活性を顕微鏡で観察する。すでに、すい臓がんの解析を進めているため、抗がん活性の高いBt 菌から細胞毒性を指標に目的のタンパク質を精製する。 殺虫性タンパク質→ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ ネッタイシマカやヒトスジシマカは熱帯、亜熱帯地域に広く分布し、デング熱などの原因となるウイルスを媒介する。沖縄に生息するヒトスジシマカはネッタイシマカと近縁であるがデング熱ウイルスを保持していない。そこで今回、オキナワヒトスジシマカの幼虫を96 穴プレートで飼育し、1,000 株からのBt 菌毒素を作用させ殺虫性タンパク質を同定する。昆虫種への特異性は、鱗翅目、鞘翅目、双翅目、蜻蛉目などの昆虫幼虫に作用させ検査する。活性の高いBt 菌からヒトスジシマカ殺虫性を指に目的のタンパク質を精製する。
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