研究課題
人畜に無害な微生物Bacillus thuringiensis(Bt菌)のコレクション4740株から、それぞれ凝集性(結晶性)タンパク質を抽出して、難治がん細胞や病原寄生虫などの病原体に対する生物活性の大規模なスクリーニングを行った。この結果、ヒトすい臓がん細胞に作用するタンパク質を生産するBt菌株を49株、ヒト肺がん細胞に作用する菌株を9株、ヒト悪性脳腫瘍細胞に対する菌株を3株、ヒト乳腺がん細胞に作用する菌株を2株同定した。また、近年の愛玩動物の増加とそれらのがんでの死亡数の多さから、イヌリンパ腫細胞に作用するBt菌タンパク質をスクリーニングしたところ、38株で陽性の反応を得た。これらのがん細胞へのBt菌タンパク質の作用は様々で、細胞を膨張させて破壊するものや細胞が萎縮しているものが観察された。ヒト悪性脳腫瘍細胞に対する菌株を3株では、再現性よく細胞破壊作用が観られた。他のがん細胞でも一定の再現性が得られたが、より詳しい解析が必要である。病原寄生虫ではアフリカ睡眠病の原因原虫であるトリパノソーマを用いた。トリパノソーマはその生活環境において、媒介昆虫内の唾液腺型と人畜に感染した場合の血中での血流型の2つに分けられる。今回この唾液腺型と血流型トリパノソーマに対して、4740株のBt菌作用因子の大規模スクリーニングを行った。1次スクリーニングでは、Bt菌104株から得られたタンパク質が、唾液腺型トリパノソーマの形態や運動性に影響を与えた。このうち48株由来のタンパク質では、ほとんどの唾液腺型トリパノソーマに丸く形態変化を引き起こし、鞭毛性の運動は観察されなかった。残りの56株では唾液腺型トリパノソーマが凝集していた。血流型トリパノソーマでは、129株から得られたタンパク質によって形態変化や凝集性が確認された。
2: おおむね順調に進展している
一部実施できなかった項目もあるが、ほぼ計画書通りに進行している。
細胞毒性の再現性を十分に確認し、非特異的な細胞破壊活性を区別するため、溶血性試験を行う。細胞毒性、特異性の高いBt菌株から毒性タンパク質を精製し、その部分的な一次構造を得る。
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Journal of BUON
巻: 20 ページ: 5-16
Toxins
巻: 6 ページ: 2115-2126
10.3390/toxins6061882
http://www.bio.kyutech.ac.jp/~kitada/