研究課題/領域番号 |
25292053
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
宮崎 安将 独立行政法人森林総合研究所, きのこ・微生物研究領域, 主任研究員 (40343800)
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研究分担者 |
金子 真也 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (10399694)
坂本 裕一 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生物機能開発分野, 主任研究員 (80390889)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シイタケ / 子実体形成 / 光 / 光受容体 / 遺伝子 |
研究概要 |
シイタケの子実体形成には光が必要である。現在までに光受容体をコードする遺伝子phrA, phrB. Le.cryを単離・同定している。光受容体は光を一番最初に受け取る分子であるため細胞内に常在しており、光受容体遺伝子の発現は分化ステージによらず、一般的にほぼ構成的であることが多い。そこで、きのこ類に存在する光応答メカニズムに関わる分子を網羅するため、シイタケにおいて光を照射した菌糸及び暗黒下で培養した菌糸からmRNAを抽出し、それぞれに対し次世代型DNAシーケンサーを用いたSuper-SAGE法により発現遺伝子の解析を行うこととした。Super-SAGE法は通常のショットガン・シーケシングに比較して、発現遺伝子のタグ数を非常に多くカウント出来るため、いわばデジタル・ノーザンとも言える手法である。本法で得られたデータについてバイオインフォマティクス的手法により網羅的解析を行った結果、シイタケにおける光応答発現遺伝子は、その発現が上昇するものについて3861個、一方減少するものについては483個同定することが出来た。 光に応答して発現が上昇する遺伝子群の中には、シイタケの遺伝子転写制御因子で子実体形成関連遺伝子であるpriA, priB, Le.cdc5, ctg1等やcAMP系シグナル伝達経路のキーであるGタンパク質αサブユニット遺伝子等が含まれていたほか、褐変化等着色に関わるチロシナーゼ遺伝子(Le.tyr)が存在していた。こられ遺伝子の発現上昇は、光刺激によって子実体への分化が進むこと、及び光依存的に子実体の着色進むことを如実に反映している。また、発現が減少する遺伝子群に中にはラッカーゼをコードする遺伝子の一群も含まれていた。ラッカーゼは数十のアイソザイムを持つファミリーを形成しており、きのこの着色と木材分解との関係が非常に有機的で複雑な系を成していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Super-SAGE法により得られたデータについてバイオインフォマティクス的手法により網羅的解析を行い、シイタケにおける光応答発現遺伝子、その発現が上昇するものについて3861個、一方減少するものについては483個同定することが出来た。また、チロシナーゼ遺伝子及びラッカーゼ遺伝子の発現解析により、きのこの着色と木材分解との関係が非常に有機的で複雑な系を成していることが示唆されたため。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム解読技術の進歩により、今では生物の遺伝子(塩基)情報が容易に取得可能となった。 そのため、遺伝子情報以上にその遺伝子がコードするタンパク質の機能・役割についての解析が重要となってきている。また、個々のタンパク質を解析することは生物の生体システムを理解するためにも必要不可欠な情報である。そこで、前年度の研究で子実体形成との関連が認められた遺伝子について、コードするアミノ酸配列からの解析によりドメイン探索を行い、タンパク質の機能解析に進める。そこで、タンパク質の詳細な機能を解析するため、大腸菌や酵母にて当該タンパク質を大量発現・精製したのち、DNAに結合する際に認識する塩基配列の特定や相互作用タンパク質の解析を行う。これにより、当該タンパク質の機能が明らかとなり、タンパク質-タンパク質・タンパク質-遺伝子間ネットワークが明らかとなり、当該タンパク質から伝えられるシグナル伝達経路が分かると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
きのこ類の光応答に関する遺伝子発現解析に関し、予測したデータと違う新たな遺伝子が見出され、研究計画及び論文作成に変更が生じたため。 計2,330,509円繰越額のうち、物品費872,663円、旅費847,285円、人件費・謝金500,000円及びその他110,000の予定で使用する計画である。
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