研究課題
シロイヌナズナのNa輸送体のプロモーター下流にルシフェラーゼ遺伝子を導入して,発現解析を行った。9種類のプロモーターの概日性発現を暗条件の培養の後に,連続明条件において調べたところ,概日性のリズムが見いだされた。輸送体の発現の概日性は光合成などの機能と関連することが考えられ,細胞伸長や膜電位維持の面で関与することがさらに示された。放射性22Naを水耕培によって取込ませて,Naの吸収と植物内循環に関して検討した。HKTは維管束で発現することが分かっていたが,hkt変異株においてはNaの蓄積が地上部で生じた。NaとバランスをとるKについても,加速器において放射性Kを生成した。このKを水耕培によって植物に吸収させたところ,一部の組織で蓄積は見られたが,HKTとの関連性は見いだせていない。上記の結果は,HKTはNa吸収系として機能することが確認され,Na循環に関与する輸送体の一つであることが明らかとなった。植物の原形質膜で発現する陽イオン輸送体と対をなすと考えられている陰イオンチャネルも,細胞内の浸透圧の調節に関与することが示されている。今回,両輸送体の関係が示されている。シロイヌナズナ遺伝子のcomplementary RNAを卵母細胞に導入して,電極二本差しイオンチャネル活性の測定による輸送体の発現検討を行った。この結果,いくつかのCPK6タンパク質が脂質を受けると輸送活性を示すが,脂質修飾を受けないと輸送活性が極端に減少することが明らかとなった。Myristoylationが植物の細胞内で生じた後に,Palmitoylationが効率よく生じることが推定される。このことにより,水溶性タンパク質が生体膜に移行するために,脂質修飾がおこったのち原形質膜上の陰イオンチャネルを活性化することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
植物のNa輸送体のプロモーターは,概日性発現を示す可能性は低いと考えられていた。しかし,本研究では,いくつかのプロモーターの概日性が見いだされた。また,今回作成されたルシフェラーゼによる発現解析可能な植物を用いることで,様々な環境変化に対応した遺伝子発現解析が可能になった。これはこれまで構築していたGUSによる発現解析は発現量の蓄積をモニターするものであり,一方,本発現系は一過的な発現変動を観察できるものである。シロイヌナズナにおいて放射性22Naの植物の吸収,循環,蓄積をモニタリングをポジトロンイメージング装置を利用した方法で行うことを可能にした。今回,新たに花芽,葉の先端にNaが蓄積することが明らかとなり,HKTの発現との相関が明らかとなった。さらに,電子線形加速器において放射性Kを生成して,Kの精製を行いKの植物循環をモニターすることにも成功した。半減期が非常に短いK-42とK-43を入手できる研究機関は全国でも限られており,私たちはそれを共同研究者の協力を得て可能にすることができた。Kの循環とNaの循環の相関性を導き出すことが可能となった。植物の原形質膜で発現する陰イオンチャネルの制御因子が脂質修飾で調節されることが分かった。Myristoylationによって水溶性タンパク質に付着した後,Palmitoylationがおこり,細胞膜へ移行することが明らかとなった。膜蛋白質の機能調節系として脂質の付与が重要な役割を示すことが明らかとなりイオンチャネルを活性化が明らかとなった。
Na輸送体の発現を調べたところ予想に反して孔辺細胞における発現が観測された。この事象の件とのため,新たにプラスミドを作成して植物へ導入して発現観察を行う必要がある。
シロイヌナズナのNaトランスポーター(輸送体)のHKTは維管束で発現するが,今回孔辺細胞にもシグナルが見られた。これは新規の結果であるが,慎重な検証結果が必要となった。
GUS発現植物で組織発現を検討した。プロモーターの長さが短いコンストラクトを構築して,植物に導入して遺伝子発現を検討した。
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