研究課題/領域番号 |
25292058
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
福居 俊昭 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (80271542)
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研究分担者 |
折田 和泉 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (70525964)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 微生物工学 / 代謝工学 / 生分解性プラスチック / バイオマスプラスチック / ポリヒドロキシアルカン酸 |
研究実績の概要 |
微生物産生ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を環境低負荷型高分子素材として実用化するには、物性の優れた共重合PHAを低コストで生産する必要がある。本研究では次世代型の新規バイオプラスチックの生合成技術の開発を目的とする。 1) 前年度までにポリ(3-ヒドロキシブタン酸-co-3-ヒドロキシヘキサン酸)[P(3HB-co-3HHx)]生合成能付与、グルコース資化性付与、グリセロール資化性強化を集積した株を確立し、C4である3HBユニットの供給経路、C6である3HHxユニットの供給経路の改変による組成制御を行った。今年度、3HBユニット供給の主要酵素であるアセトアセチル-CoAレダクターゼ遺伝子phaB1の置換についてさらに検討した。phaB1を低活性ホモログの遺伝子であるphaB2や、逆β-酸化経路を構成するヒドラターゼと脱水素酵素の遺伝子と置換した結果、柔軟性に優れたプラスチックである3HHx分率8~15%のP(3HB-co-3HHx)を高い蓄積率で生合成できることを示した。この改変株はグリセロール炭素源においても、昨年度までの改変株と比較して高い蓄積率でP(3HB-co-3HHx)を合成したが、PhaB1保持株よりポリマー蓄積率は依然として低く、グリセロール炭素源に合わせた改変が必要と考えられた。 2) R. eutrophaでの知見を基に、糖質原料からのP(3HB-co-3HHx)生合成経路を大腸菌Escherichia coliに導入した。昨年度から発現系を改良することで、グルコースから3HHx分率13.5 mol%のP(3HB-co-3HHx)を30wt%で生合成する株を作製した。また検討の過程で作製した各種組換え株の検討から、3HHxユニットの供給経路と、その確立に必須な遺伝子を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数の改変を集積したR. eutropha組換え株によるP(3HB-co-3HHx)生合成において、フルクトース・グルコースを原料した生合成ではモノマー供給経路の改変により柔軟性に優れた物性を示す3HHx分率の共重合体を、昨年度の株より高い蓄積率で生合成する株を作製することができた。グリセロール原料についても昨年度より改善が見られたが、未だ不十分であり、グリセロール代謝に焦点をあてた改変をさらに行う。またE. coliを宿主とした組換え株においても、グルコース原料からのP(3HB-co-3HHx)を生合成する代謝経路の構築に成功した。一方で、フェニル乳酸ユニットを含むPHA共重合体の生合成を目指したE. coli組み換え株を作製したが、ポリマー鎖中へのフェニル乳酸ユニットの導入について明確な証拠は得られなかった。ブロック共重合体の生合成については、改変モノマー経路が十分に機能せず、今後の検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの検討から、R. eutrophaがもともと有している強力な3HBユニット供給経路は改変せずに3HHxユニット供給を強化させるための戦略について知見が得られた。この知見に基に新たな改変株を作製して評価し、糖質やグリセロールからのP(3HB-co-3HHx)生産をさらに高効率化する。新規PHAやブロック共重合体についてモノマー供給経路の改良を行う。また、原料炭素を効率的にPHA生産に向けるため、生合成遺伝子の発現制御や炭酸固定経路の導入について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は一般的な遺伝子工学によるR. eutrophaやE. coliの組換え株の作製と、その組換え株の培養を主に実施し、装置購入や高価な試薬・キットを多量に必要とする実験が少なかったため、消耗品の使用額が当初見込みより少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度までの問題点を解決する遺伝子組換え株の作製のため、遺伝子工学用酵素・キットやオリゴDNA合成に使用する。
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