研究課題
本研究では、生体防御へのHSPsの多機能性に着目し、腸管粘膜組織の上皮細胞や抗原提示細胞、T細胞の機能制御に対するHSPsの作用と分子多様性の意義を解明する。最終年度では、より生理的な環境に近づけた異なる共培養条件で再検討した。マウス骨髄細胞をGM-CSF、IL-10及びTGF-b存在下で培養した制御型樹状細胞(DCreg)を調製し、HSP抗原感作したDCregとnaive T 細胞を共培養してTregのFoxp3発現率を解析した。その結果、HSP抗原非存在下と比べて、大腸菌GroEL では有意に低下したが、逆に、ビフィズス菌GroEL では2倍以上に発現が上昇した。すなわち、制御的環境下で教育された抗原提示細胞の存在下ではビフィズス菌GroELはT細胞の分化に対して制御性に指向させるというFoxp3発現率に対するHSPの種差を新たに見出した。また、その培養上清のサイトカインを解析したところ、ビフィズス菌GroEL で抗原感作した場合、IL-6およびTNF-aの炎症性サイトカインの産生が抑制されていた。そこで、ビフィズス菌GroELが未熟な抗原提示細胞の分化・教育に他のHSPとは異なる作用を示す点を明らかにする一環として、免疫応答型DCとDCregに各HSP抗原を負荷し、共刺激分子CD86の発現に与える影響を調べた。その結果、DCにHSPを負荷すると、いずれの場合もCD86の発現は増加したが、DCregへビフィズス菌GroELの抗原負荷では有意にCD86の発現が抑制されることが判明した。一方、セルロースナノファイバー(CNF)の連続経口投与が生体に及ぼす影響を調べた。8週間摂食後、炎症マーカーの指標として糞便中のリポカリン量を定量したところ対照群とほぼ同程度の値を示し、大腸炎は認められなかった。大腸の粘膜固有層に存在する、転写因子RORgtを発現する白血球細胞が減少傾向を示すことが見出された。さらに、粘膜上皮細胞の物理的なずり応答刺激を定量できる測定系も構築し、腸内細菌の相利共生を可能にするHSPの意義を見出した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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