研究課題
基盤研究(B)
本研究では二つの課題を並行して実施する。課題1はビタミンD水酸化体の高効率生産で課題2は血中の25-ヒドロキシビタミンDの高感度システムの開発であるが、両者は密接な関係があり、課題1で得られる水酸化体を課題2において標準品として用いる。課題1では、従来、放線菌S.lividansを宿主としてビタミンD水酸化酵素CYP105A1変異体を発現させていたため、基質濃度を十分に上げることができず、生産性に問題があった。この問題を克服するため、宿主をR. erythropolisに変えることを試みた。この放線菌はナイシン処理によって溶菌せず、シクロデキストリンに結合したビタミンDがナイシンによって作られた孔からそのまま細胞内に入っていく。CYP105A1変異体遺伝子を発現ベクターに組み込み、R. erythropolisに導入し、CYP105A1変異体の機能発現に成功した一方、酵母を用いたビタミンD水酸化体の製造については、既に、ヒト由来CYP2R1発現酵母を用いた25-ヒドロキシビタミンD2生産技術を改良し、遺伝子破壊と遺伝子導入による25-ヒドロキシビタミンD3生産技術の開発に着手した。課題2では、疎水性ポリマーであるPDDA水溶液を電極に滴下し、室温で風乾させた。その後、3種類のシトクロムP450、CYP105A1変異体、CYP3A4、CYP21A2をそれぞれ電極に滴下した。冷蔵庫内で1時間静置した後、緩衝液で洗浄し、電気化学測定に用いた。その結果、CYP21A2溶液を使用した場合に酵素と電極間での電子の移動が観測され、基質の有無で電流の差が認められた。CYP105A1変異体については水溶性のP450であるため、疎水性ポリマーで修飾された電極に結合しなかった可能性があり、CYP3A4の場合は精製酵素ではなく膜画分を用いたため良い結果が得られなかったと推測している。
2: おおむね順調に進展している
二つの課題のうち課題1については放線菌由来CYP105A1変異体を用いた研究、CYP2R1発現酵母を用いた研究ともに順調に進展しており、さらに、他のCYP分子種を用いた検討にも着手した。また、課題2についてもP450酵素電極の基礎となる技術を確立することができたため、全体として概ね順調に進展していると言える。
課題1についてはナイシン処理したR. erythropolis菌体にビタミンDとシクロデキストリンを添加して反応条件を検討することにより、ビタミンD水酸化体の生産性を飛躍的に高める。さらに、1a位水酸化酵素 CYP27B1のR. erythropolis内機能発現を試みる。課題2については疎水性ポリマーで修飾した電極にビタミンD24位水酸化酵素CYP24A1をに固定し、血中の25-ヒドロキシビタミンDの測定を試みる。
試薬、器材などの消耗品費が当初の予定よりも少額で済んだことによる。研究分担者の加納が担当する酵素電極実験に備品が必要で、そちらに使用する予定である。
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