研究実績の概要 |
本研究では二つの課題を並行して実施している。課題1はビタミンD水酸化体の高効率生産で、課題2は血中の25-ヒドロキシビタミンDの高感度検出システムの開発である。課題1では、昨年度CYP105A1の三重変異体により1α,25-ジヒドロキシビタミンD2の生産が可能になったが、今年度、二重変異体の活性を詳細に解析し、25,26-ジヒドロキシビタミンD2の高効率生産が可能になった(Hayashi et al.,Biochem.Biophys.Res. Commun.(2016)in press)。したがって、CYP105A1変異体を用いて25-ヒドロキシ-ビタミンD3およびD2、1α,25-ジヒドロキシ-ビタミンD3およびD2、25,26-ジヒドロキシビタミンD2、1α,25,26-トリヒドロキシ-ビタミンD3の高効率生産が可能になった。これらはいずれもヒト血中に見られる代謝物であり、血中代謝物測定における標準品として価値が高い。ヒト由来CYP24A1発現菌体を用いて得られる水酸化体と合わせて20種を超えるビタミンD代謝物ライブラリーを得ることができた。 課題2ではCYP105A1を用いてP450電極の基礎を固める研究を実施し、種々の基質を試してみたが、酵素反応による電流の変化は見られなかった。昨年のCYP21A2の場合と同様、酸素の4電子還元反応を触媒し、水分子を生成すると考えられる。そこで、25-ヒドロキシビタミンDの高感度検出システムとして分割型ルシフェラーゼとビタミンD受容体のキメラ蛋白質を用いたシステムの構築を試みたが、変異型ビタミンD受容体R274Lを用いることにより1α,25-ジヒドロキシ-ビタミンD3の影響をほとんど受けずに血中25-ヒドロキシビタミンD濃度を測定するシステムの開発に成功した。
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