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2014 年度 実績報告書

微生物酵素を用いた革新的な糖鎖付加技術の開発とその機能性糖鎖複合体の合成への応用

研究課題

研究課題/領域番号 25292063
研究機関石川県立大学

研究代表者

山本 憲二  石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (70109049)

研究分担者 加藤 紀彦  石川県立大学, 生物資源環境学部, 助教 (40724612)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードエンドグリコシダーゼ / オキサゾリン化合物 / 糖鎖リモデリング / 免疫グロブリンG / 抗体医薬 / Endo-M
研究実績の概要

本研究の目的の一つであるタンパク質に糖鎖を付加する糖転移活性が促進され、加水分解活性が抑制されたEndo-Mの変異酵素を取得することを試みた結果、従来、取得していたN175Q変異酵素の他にN175H変異酵素が効率的な糖転移活性を有することを見出した。すなわち、N175Qと同様に、オキサゾリン型糖鎖を供与体として用いることによって、効率的に糖転移生成物を得ることができる酵素であった。さらに、オキサゾリン型糖鎖のみならず、シアロ糖ペプチドのシアロ糖鎖を受容体に転移付加することも見出した。
そこで、N175Hを用いて、組換え糖タンパク質の糖鎖のリモデリングを試みた。すなわち、組換え酵母由来のヒトIgGについて、酵母型の高マンノース型糖鎖をヒト型糖鎖(シアロ複合型糖鎖)にN175H変異酵素を用いて変換することを検討した。まず、組換えIgGについてEndo-Hを作用させ、糖鎖の切断効率をヒトIgG抗体を用いたウェスタンブロッティングで調べたところ、ヒトIgGの重鎖の糖鎖が遊離したタンパク質が、SDS-PAGEによってもとの重鎖のタンパク質に比べて下方に移動していることを確認した。すなわち、Endo-Hを作用した組換えIgGについてはほとんど全ての糖鎖が遊離したことが確認された。そこで、このような糖鎖を除去したヒトIgGを用いて、糖鎖のすげ替えを行った。シアロ複合型二本鎖糖鎖を有する卵黄由来糖ペプチドを糖鎖供与体としてN175H変異酵素を用いて酵素反応を行い、ヒトIgG抗体を用いたウェスタンブロッティングによって調べた結果、シアロ糖鎖が付加された組換えIgGが見出された。また、シアル酸を認識するSNAレクチンを用いたブロッティングによってもシアロ糖鎖が付加されたことが確認され、これらの結果から、酵母で生産された組換えIgGの糖鎖がヒト型糖鎖に変換されたことを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

糖鎖付加技術の高度効率化と糖タンパク質の糖鎖のリモデリングの実現という目標について、おおむね大きな進展があった。すなわち、本研究の応用に向けた目標であるEndo-Mの変異酵素を用いた組換え糖タンパク質の糖鎖のヒト型糖鎖への変換に関して、未だプレリミナリーな段階ではあるが、リモデリングに成功することができた。とりわけ、バイオ医薬品として重要な抗体医薬であるヒトIgGを酵母で生産させて得られた組換え糖タンパク質の糖鎖をヒト型糖鎖に変換することに成功したことは今後のバイオシミラー医薬品の製造に向けて大きな貢献をすることになったと考える。今後はこのヒト型糖鎖を有する組換え糖タンパク質を大量に取得する方法を考えなければならない。すなわち、バイシミラー医薬品は安全性が担保されることが重要であり、厳密な安全性の諸問題をクリアーする必要があるが、その際に問題となるのが糖鎖の抗原性である。この問題を解決するためには抗原性を持たないことが既に知られている糖鎖をタンパク質へ付加する技術が重要になって来る。本研究において、Endo-Mの変異酵素により、ニワトリ卵黄から比較的に容易に得ることができる糖ペプチドの糖鎖を組換えヒトIgGに転移付加して、糖鎖をリモデリングできる技術を開発できたことは目標の達成に近づいたと考えられ、医薬や医療の分野への波及効果は大きいと考えている。

今後の研究の推進方策

平成27年度の本研究の実施推進方策としては、Endo-M酵素を改変して、その基質特異性を拡大するために結晶化を行い構造解析を行って、基質が入り込むポケットを大きくした変異酵素を得ることを目的としている。先ず、(1)Endo-M酵素の結晶化を試みる。精製酵素をさまざまな結晶作成用の緩衝液を用いた条件下にて結晶化を試みて、その作成条件を検討し、確立する。(2)結晶化酵素についてX線構造解析を行う。(3)解析の結果を基にして、部位特異的変異を行うことにより活性中心のポケットを広げた変異酵素を取得する。すなわち、基質が活性中心のポケットに入り易いように周辺のアミノ酸残基を置換して、ポケットの部分を広げる操作を行う。立体構造が解析されて同じファミリーに属するEndo-M類似の酵素との比較によって、Endo-MのN-末端より251番目の芳香族アミノ酸であるトリプトファンが活性中心のポケットを狭めていることが推察される。前年度において、実際にこの残基をアラニンやアスパラギン残基に置換することによってL-フコースが糖鎖のコア部分に結合しているようなN-結合型糖鎖に対して、有効に作用することを確認している。(4)取得した変異酵素を用いて、その糖転移活性を利用することにより、幅広いさまざまな構造の糖鎖を持つ生理活性物質の合成を行う。本酵素は他起源の酵素と比較して高い糖転移活性を有する酵素であるので、広い基質特異性を獲得することができれば、その特異的な糖転移活性を用いて、糖鎖の異なるさまざまな生理活性物質のライブラリーを作成することが可能であり、糖鎖構造の多様性による化合物の機能や薬効の評価をすることができる。

次年度使用額が生じた理由

当初の目標としては今年度において、酵母由来の組換えIgGの他に、酵母で生産させた組換えサイトカインである糖タンパク質の糖鎖のリモデリングを実施する予定であった。そのための材料費と人件費を割り当てていたが、適当な組換え糖タンパク質のサイトカインを見つけることができなかったために次年度に実施する課題とした。そのために経費を使用することなく次年度使用額として残った。

次年度使用額の使用計画

次年度使用額とした分については既に糖鎖のリモデリングを目的とした組換え糖タンパク質のサイトカインを入手したために次年度に行う研究の実施のための使用計画に入っている。従って、次年度使用額とした分はすべて使用予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Transglycosidase-like activity of Mucor hiemalis endoglycosidase mutants enabling the synthesis of glycoconjugates using a natural glycan donor2015

    • 著者名/発表者名
      K.Sakaguchi, T.Katoh, K.Yamamoto
    • 雑誌名

      Biotechnology and Applied Biochemistry

      巻: xx ページ: xx-xx

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 微生物のエンドグリコシダーゼを用いた生理活性物質の合成2015

    • 著者名/発表者名
      山本憲二
    • 雑誌名

      化学と生物

      巻: 53 ページ: 252-257

    • 査読あり
  • [学会発表] 微生物のエンドグリコシダーゼを用いた生理活性物質の合成2015

    • 著者名/発表者名
      山本憲二
    • 学会等名
      2015年度日本農芸化学会大会シンポジウム
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-29
    • 招待講演
  • [学会発表] 微生物のエンドグリコシダーゼを用いた糖鎖の付加と改変2014

    • 著者名/発表者名
      山本憲二
    • 学会等名
      第12回糖鎖科学コンソーシアムシンポジウム
    • 発表場所
      東京医科歯科大学
    • 年月日
      2014-12-04
    • 招待講演
  • [学会発表] Endo-MおよびGlycosynthaseによる産業応用を指向した均一構造のN-結合型糖鎖を導入した糖タンパク質の生産2014

    • 著者名/発表者名
      熊田純一・羽生正人・丹治嵩裕・湯浅徳行・岩城隼・加藤紀彦・山本憲二・松崎祐二
    • 学会等名
      第33回日本糖質学会年会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      2014-08-11
  • [学会発表] Endo-M酵素を用いた糖鎖の付加2014

    • 著者名/発表者名
      山本憲二
    • 学会等名
      第13回国際バイオテクノロジー展/技術会議企業セミナー
    • 発表場所
      東京ビッグサイト
    • 年月日
      2014-05-14
    • 招待講演
  • [図書] 抗体医薬における細胞構築・培養・ダウンストリームのすべて2015

    • 著者名/発表者名
      熊田純一、松崎祐二、山本憲二
    • 総ページ数
      10
    • 出版者
      シーエムシー出版
  • [図書] Glycoscience: Biology and Medicine2014

    • 著者名/発表者名
      K.Yamamoto
    • 総ページ数
      9
    • 出版者
      Springer

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公開日: 2016-06-01  

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