研究課題
基盤研究(B)
味覚受容体(T1Rs、T2Rs)や味覚シグナル伝達因子群(Trpm5、Gα-gustducin、PLC-β2)は、味蕾だけでなく、消化管(胃・小腸)の刷子細胞や内分泌細胞でも発現する。本研究では、味蕾において甘・苦・うま味細胞への運命決定に必須である転写因子Skn-1aが、胃や小腸に存在する細胞の分化を制御する可能性を検証した。まず、野生型とSkn-1欠損マウス小腸(十二指腸、空腸、回腸)の凍結切片を作製し、in situ ハイブリダイゼーション法と免疫染色法を用いて、Skn-1aと味覚シグナル伝達因子群のmRNAおよびタンパク質の発現パターンを比較した。その結果、野生型マウスではいずれの分子のシグナルも検出されたのに対して、Skn-1欠損マウスではGα-gustducinとPLC-β2のシグナルは検出されたが、Skn-1aとTrpm5のシグナルは検出されなかった。Trpm5は、小腸において主に刷子細胞に発現しているため、それぞれ刷子細胞、内分泌細胞、L 細胞のマーカー分子であるDclk1、ChgA、GLP-1について、免疫染色法を用いてタンパク質の発現を調べた。その結果、Dclk1のみSkn-1欠損マウスにおいて発現が消失していた。以上より、Skn-1aがマウス小腸において刷子細胞の分化を制御していることが示された。次に、機能未知である刷子細胞の糖代謝に与える影響を調べるために、OGTT、IPGTT、ITT、HOMA解析を行い、野生型とSkn-1欠損マウス間で比較した。その結果、OGTT解析において、血糖値変化には両群間で差がなかったが、グルコース投与15分後における血漿インスリン濃度が、Skn-1欠損マウスにおいて有意に低かった。また、IPGTT、HOMA、ITT解析からは、膵臓インスリン分泌能とインスリン感受性には差がないことが分かった。以上の実験結果から、刷子細胞がグルコースセンサーとして働き、インスリン分泌を促進している可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
Skn-1aがマウス小腸において刷子細胞の分化を制御することを明らかにした。機能未知である刷子細胞が、グルコースセンサーとして働き、インスリン分泌を促進していることを示唆する実験結果が得られた。
Skn-1欠損マウスの表現型を、解剖学・行動学的な様々な手法を用いて解析する。また、食餌成分の影響を調べるために、Skn-1欠損ヘテロマウス同士を交配した同腹仔を高炭水化物食や高脂肪食摂取条件下でも飼育して、通常食飼育下と同様の方法で表現型解析を行う。
次年度以降に使用できるよう経費節減に努めた結果、次年度使用額を捻出することができた。分子生物学用試薬など消耗品を購入する予定である。
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http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/tastescience/