研究課題
小腸上皮細胞の約0.4%を構成する刷子細胞の分化制御機構と細胞機能は不明である。前年度までに、転写因子Skn-1a がマウス小腸において刷子細胞の分化を制御していることを明らかにした。また、刷子細胞がグルコースセンサーとして働き、インスリン分泌を促進している可能性が示唆された。今年度はまず、Skn-1欠損(KO)マウスを用いて、エネルギー代謝に関する表現型解析を行った。その結果、KOマウスは野生型(WT)マウスと比較して、出生直後の体重には違いが見られなかったが、通常食と高脂肪食摂取いずれの条件下においても、生育に伴う体重増加が抑制され、体脂肪率が低下していた。体重は、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスで決定される。体重増加抑制の原因を調べたところ、摂餌量には差が無かったが、間接熱量計を用いた計測の結果、消費エネルギーの増大に起因することが明らかとなった。さらに、24時間の尿中カテコールアミン量を測定したところ、KOマウスではWTマウスより増加していた。次に、刷子細胞に発現する遺伝子を同定する目的で、RNA-Seq法を用いて、WTマウスとKOマウス間で小腸上皮における遺伝子発現プロファイルを比較した。発現量を示す値が、WTマウスと比べてKOマウスで小さい遺伝子は、刷子細胞特異的に発現する候補と考えられる。刷子細胞に発現するTrpm5やDclk1と同様の基準に分類された遺伝子について、抗ペプチド抗体を作製し、小腸上皮切片を用いて免疫染色を行った結果、この遺伝子が刷子細胞に発現することが示された。
1: 当初の計画以上に進展している
Skn-1欠損マウスの表現型解析では、当初想定していた以上の新規知見が得られたため。また、刷子細胞に発現する新規遺伝子の同定にも成功した。
刷子細胞に発現することを見出した遺伝子の異所発現系を用いた機能解析と、遺伝子欠損マウスの作出と表現型解析を行う。
経費節減に努めた結果、前年度に生じた今年度使用額のほとんどを、次年度使用額として捻出することができた。
分子生物学用試薬など消耗品を購入する予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Biosci. Biotechnol. Biochem.
巻: 79 ページ: 171-176
10.1080/09168451.2014.975187
PLoS One
巻: 9 ページ: e98738
10.1371/journal.pone.0098738
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/tastescience/