研究課題
小腸上皮細胞の約0.4%を構成する刷子細胞の分化制御機構と細胞機能は、最近まで不明であった。前年度までに、転写因子Skn-1aが味蕾の甘・苦・うま味細胞だけでなく、消化管刷子細胞の分化も制御することを示した。また、Skn-1欠損マウスの摂餌量は変わらなかったが、エネルギー消費量の増加により低体重・低体脂肪を示した。欠損マウスでは、カテコールアミン分泌の増加、脂肪酸β酸化亢進と経口糖負荷試験におけるインスリン分泌の減少が観察された。以上より、刷子細胞や味細胞を起点として、脳を介した新たなエネルギー恒常性維持機構の存在が示唆された。さらに、刷子細胞頂端部に局在するオーファン受容体を発見した。今年度は、このオーファン受容体の生体内における機能を解明する目的で、TALEN法とCRISPR-Cas9法を用いてその遺伝子欠損マウスの作出を試みた。その結果、開始コドンを含むエキソン2にフレームシフト変異を生じる2種類のホモ欠損マウスを獲得した。一方、受容体タンパク質を発現・精製し、相互作用する物質を同定する新たなアッセイ系の構築を試みた。まず、N末端細胞外ドメインとC末端細胞内ドメインから不安定な構造と予想される領域を除き、安定化タンパク質bRILと精製用FLAGタグを付加した数種類のコンストラクトを作製した。これらをSf9細胞に導入し、目的タンパク質の発現と精製を行った結果、糖鎖修飾が異なる2種類の目的バンドが観察された。次に、精製した受容体タンパク質をリポソーム膜に再構成させた。最近、小腸刷子細胞が消化管寄生虫を排除する2型免疫に関わるという論文が発表された。遺伝子欠損マウスを用いた解析から、Gタンパク質αサブユニットであるガストデューシンと下流シグナル伝達因子であるTrpm5が、刷子細胞における免疫応答に重要であることが示された。今後の課題として、オーファン受容体が2型免疫において果たす役割の解明が挙げられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/tastescience/