研究課題/領域番号 |
25292069
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小田 裕昭 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (20204208)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 時間栄養学 / 概日時計 / メタボリック・シンドローム / 肝臓時計 |
研究実績の概要 |
規則正しい食生活は、健康によいとされている。何をどれだけ食べるかは、いまでも重要な課題であるが、どのようなタイミングで「いつ」食べるかなどについて、分子生物学的研究は十分にされていない。一方、時間生物学の進歩により時計遺伝子が発見されて、生物時計の分子生物学は進み、すべての細胞が概日リズムを持つことが明らかとなった。時計遺伝子の改変動物で代謝異常が示されるようになってきたが、私は不規則な摂食タイミングだけで代謝異常が起きることを初めて示した。本研究では、摂食タイミングは、代謝のキー制御因子であることを示し、その分子メカニズム明らかにするために以下の実験を行った。 昨年度は初代培養肝細胞を用いて概日リズム発振の維持機構を研究して細胞骨格タンパク質の重要性を明らかにした。本年度はこの肝細胞における概日時計の変化が脂質代謝の異常もたらすことについて動物個体を用いて明らかにする実験を行った。摂食リズム崩壊モデルラットを用いて、高コレステロール食を与え、血清コレステロール代謝に及ぼす影響について検討した。摂食リズム崩壊モデルとして、これまで「ダラダラ食い」を用いたが、今回の研究では、夜食症候群モデルに相当する休息期のみ食事を与える方法と、夜摂食と昼摂食を1週間ごと繰り返すプロトコールを用いた。活動期に食べさせず、休息期に摂食させると、高コレステロール血症を引き起こすことが明らかとなった。夜摂食と昼摂食を繰り返す実験群では、休息期の昼摂食時に血清コレステロールが上昇し、夜摂食で低下することがわかったが、ずっと夜摂食群まで下がることはなく高い値を維持したままであった。肝臓の遺伝子発現を検討すると、夜食症候群も昼摂食と夜摂食を繰り返す群ともに、脂質代謝関連酵素の遺伝子発現の異常が観察された。しかし時計遺伝子の発現リズムは、摂食タイミングに合わせて調節されていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度から継続している動物実験であるが、摂食タイミングを変化させた動物における脂質代謝ならびに時計遺伝子の発現の解析が終了した。リアルタイムPCRによってかなり多くの遺伝子の発現を調べたため、当初予定していた時間よりも時間がかかってしまった。 脳中枢時計と肝臓時計の非同調モデルとして、昼摂食と夜摂食を繰り返すモデルを用いて実験を行ったが、シフトワーカーなど人に当てはめられるモデルと考えたからである。今回さらに、日常生活で起こり得る不規則な食生活による脳中枢時計と肝臓時計の非同調モデルも必要であると考えて、朝食欠食モデルの実験を開始した。解析中であるため実績では記載しなかったが、血清コレステロールに顕著な変化は見られていないものの、概日リズムを示すことがわかっている体温や血清ホルモンのリズムはずれることが明らかになった。これは、朝食欠食が、かなり早くから脳時計に影響を与えていることを示すものである。
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今後の研究の推進方策 |
培養肝細胞を用いた細胞形態ならびに細胞外マトリクスが概日リズムに与える影響について検討してきたが、そのシグナルタンスダクション経路を昭化する必要があり、リン酸化、脱リン酸化酵素に注目して研究を行う。ヒト肝細胞株でも同様な実験を行う。 H26年度に行った動物実験で得られた肝臓からRNAを抽出して、マイクロアレー解析ならびにリアルタイムPCR解析を行う。 実験計画にあったように肝臓時計を変動させる食事因子の探索をはじめる。
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