研究課題
本研究は研究代表者が世界に先駆けて発見した動物細胞の主要な小胞体分子シャペロンであるER-60 の生理的役割を解明し、ER-60 とアルツハイマー病や脂質異常症などとの関係を明らかにすることにより健康科学への応用を目指すものである。平成26年度までに、マウス海馬の神経細胞でER-60がアミロイドβペプチド(Aβ)の毒性に対して緩和作用と重合化の抑制作用を有すること、ER-60 の抑制作用を有するb-b’ドメインとAβとの複合体の結晶構造解析によりb-b’ドメインのD153とT121がAβとの結合に重要であることを明らかにした。しかし、これらのアミノ酸残基を欠失させてだけではAβの結合能が完全に失われることはなく、他のアミノ酸残基も介在している可能性が明らかとなった。また、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟のタンパク質結晶生成装置にて微小重力環境下で結晶を作製することで大幅な分解能の改善が見られ、得られた解析データセットはアミノ酸残基のフィッティングに十分な分解能であったにもかかわらず、結合領域と推定される領域に水とは異なる不明確な電子密度が観察されたものの、Aβを明確に特定できる電子密度が観察されなかった。そこで、Aβの結合領域に存在する他のアミノ酸残基の変異タンパク質を作製し、それらのb-b’ドメインへの結合能と複合体結晶構造解析との関係を比較検討した。その結果、Aβとの結合親和性が低い変異b-b’の結晶では不明瞭な電子密度が観察されず、一方結合親和性が高い変異b-b’の結晶では再び不明瞭な電子密度が観察された。以上の結果から、ER-60はb-b’領域でAβと1対1のモル比で結合することによりAβのポリマー形成を妨げることでその毒性発現を抑制すること、Aβとの結合は固定された様式がなくフレキシブルな結合様式によることが明らかとなった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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