・ケンフェロールによる肝細胞の薬物代謝系の調節作用として、TCDDによるアリール炭化水素受容体の活性化を介した薬物代謝第Ⅰ相酵素であるCYP1A1の誘導と第Ⅱ相酵素であるGSTやNQO1、ならびにこれらの発現に関わる転写因子であるNrf2の発現誘導を抑制すること、また、t-BHQによる第Ⅱ相酵素の誘導も抑制することを明らかにした。さらに、平成26年に実施したルテオリンをケンフェロールと共作用させると、より低濃度で薬物代謝酵素の発現調節効果が認められた。このことを理解するために、細胞内への化合物の取り込み実験を実施し、共作用条件では、ルテオリンがケンフェロールの細胞内取り込みを上げるためであることが明らかとなった。 ・クルクミンについても、同様の実験を実施した。興味深いことにクルクミンはTCDDによる肝細胞の薬物代謝第Ⅰ相ならびに第Ⅱ相酵素の発現は抑制できるが、t-BHQが誘導した第Ⅱ相酵素の発現は抑制できないことが明らかとなり、ルテオリンやケンフェロールと挙動が異なることが判った。また、クルクミン誘導体を用いて構造ー活性相関を調べることができた。一方で、アルコール代謝の活性中間体であるアセトアルデヒドの解毒に関わるアルデヒド脱水素酵素の発現をクルクミン含有抽出物が誘導することも見出した。 ・脂肪細胞のTCDDによる脂質代謝変動に関しては、ケンフェロールとクルクミンのいずれもが有効性を示さなかった。このことは、脂肪細胞が分化に伴いアリール炭化水素受容体の発現量が著しく低下し、この受容体のアンタゴニストであるケンフェロールとクルクミンが効果を発揮するには至らないと考察した。
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