研究課題/領域番号 |
25292074
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田辺 創一 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (90272624)
|
研究分担者 |
河本 正次 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (90294537)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | Th17 / CD40 / bifidobacteria / colitis / hypoxia |
研究概要 |
本研究では、腸管における炎症の引き金を引くTh17細胞に着目している。腸管炎症疾患においては、Th1やTh17などの炎症性Th細胞の活性化が病因に深く関与している。また、これらの炎症性Th細胞の活性化を抑制することは、腸管ホメオスタシス維持において非常に重要である。そこで本年度は、DSS誘導性腸炎モデルマウスを用いて、Th1やTh17細胞の活性化メカニズムを解析するとともに、ビフィズス菌による大腸炎抑制効果の評価、および腸管Th1/Th17細胞の抑制メカニズムの解明を試みた。 試験には、Th17細胞抑制効果が明らかにされているBifidobacterium infantisを用いた。DSS誘導性大腸炎モデルマウスを用いた実験により、B. infantisは腸管のTh1/Th17活性化を抑制することによって大腸炎を緩和することが示された。DSSマウスの大腸上皮細胞は、CD80やCD40などの共刺激分子を高発現しており、CD4+T細胞と相互作用してTh1/Th17細胞の分化を誘導することが明らかになった。B. infantisはこれらの共刺激分子の発現増加を抑制し、Th1/Th17活性化を抑制することが示唆された。このように、B. infantisは免疫細胞に直接作用するのではなく、大腸上皮細胞に作用することでTh1/Th17細胞を抑制するという、ビフィズス菌の新たな免疫調節作用機序を見出すことができた。 その他、炎症部位において低酸素(O2濃度1%未満)状態である領域が広がり、そこにTh17細胞が浸潤していることに着目し検討を行った。腸間膜リンパ節細胞を1%酸素下で培養すると、Th17(RORγt+ CD4+ 細胞)およびTh17型樹状細胞(CD11b+ CD11c+ 細胞)の割合が増加し、Treg(Foxp3+ CD4+ 細胞)の割合が減少した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸炎とTh17細胞との関わりについてDSSマウスを用いて検討を行った結果、腸炎マウスの大腸上皮細胞では、CD40発現が亢進しており、CD4+T細胞と相互作用してTh1/Th17細胞の分化を誘導することを明らかにした。また、B. infantisが大腸上皮細胞に直接作用することでTh1/Th17細胞を抑制するという、新たな免疫調節作用機序を見出すことができた。 加えて、炎症部位において低酸素状態である領域が広がっていること、そこにTh17細胞が浸潤していることを確認した。また、腸間膜リンパ節細胞を低酸素下で培養すると、Th17にシフトすることも明らかにした。 これらのことから、CD40強制発現細胞やノックアウトマウスを用いる検討にまでは至らなかったものの、研究はおおむね順調に進展していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
H26年度は、まず腸内細菌やプロバイオティクスと腸管バリアとの関連について検討する予定である。具体的には、L. reuteri 数株の腸管バリア保護機能を比較し、それとゲノム情報をリンク(pan-genome解析)することを試みる。 また、低酸素とTh17細胞の関連について引き続き検討する。具体的には、FLT-3リガンドで分化させた樹状細胞を低酸素下で培養した場合、ナイーブT細胞がTh17に分化誘導されるか否かなどについて検討を実施する。 さらに、ストレス時(アドレナリン過剰)におけるTh17細胞の挙動についても検討に着手する。
|