研究課題
基盤研究(B)
本研究では、FOXO1およびPGC1αを骨格筋アミノ酸代謝の主要制御因子と想定し、その分子機序を明らかにし、さらに、FOXO1とPGC1αが骨格筋量を調節する作用機序について検討を行うものである。FOXO1を骨格筋で過剰発現したマウスおよびFOXO1を骨格筋特異的に欠損させたマウスを使用し、それぞれの野生型同腹仔の骨格筋と比較して、タンパク質・アミノ酸代謝に関する遺伝子発現および代謝産物を測定した。その結果、FOXO1はグルタミン合成酵素遺伝子を発現制御することが判明し、さらにアンモニア消去を促進することが示唆された。一方、PGC-1α骨格筋で過剰発現したマウスで発現増加した遺伝子についてアレイおよびバイオインフォマティクス解析を行った。その結果、これまでにPGC-1αとの関連が知られていなかった分岐鎖アミノ酸(BCAA)代謝関連経路が検出された。骨格筋におけるPGC-1αはBCAA代謝に貢献し、運動により生じるPGC-1αの発現増加はBCAA代謝に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究は「研究の目的」に沿って、順調に進捗している。研究成果を、本年度、英文専門誌に発表した(PGC-1α-mediated branched-chain amino acid metabolism in the skeletal muscle, PLOS ONE: 9, e91006, 2014)。さらに、国内外の学会や研究会おいて研究成果を発表した。また、本研究の成果が日本栄養・食糧学会近畿支部大会にて若手奨励賞を受賞した(第52回 日本栄養・食糧学会 近畿支部大会 (2013年10月)「マウス骨格筋における転写共役因子PGC-1αによるBCAA代謝調節」。加えて、日本栄養・食糧学会大会のトピックス演題として採択された(第68回日本栄養・食糧学会大会(2014年5月)「転写共役因子を介する骨格筋アミノ酸代謝調節:遺伝子改変マウスを用いた解析」)。
本研究では転写調節因子であるFOXO1とPGC1αによる骨格筋アミノ酸代謝を解析し、アミノ酸代謝と密接に関連する筋萎縮・肥大について分子機序を明らかにすることを目指す。本研究は、申請内容に沿って、順調に進行しており、研究計画の大きな変更は無い。本年度は特に以下の実験を行なう。骨格筋特異的なFOXO1、PGC1αの遺伝子改変マウスのDNAマイクロアレイ解析を行い、FOXO1、PGC1αの標的遺伝子候補を抽出する。特にアミノ酸代謝に関連する遺伝子(代謝酵素、輸送担体)に注目する。また、筋萎縮の予防には運動が重要であるが、マウスにトレッドミルによる運動刺激を与え、同様の網羅的解析を行なう。この実験により、骨格筋においてFOXO1またはPGC1αによって制御されるアミノ酸代謝関連遺伝子が明らかになる。
初年度、マイクロアレイのセットアップを行ない、完了した。そのため、アレイチップなどを2年目以降に購入して解析する予定である。また、遺伝子改変マウスの作成を進め、2年目以降に詳細な解析を行なう予定である。マイクロアレイ、次世代シーケンサーなどの網羅的解析に使用する。また、遺伝子改変マウスの表現型の解析に使用する予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
PLoS One
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