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2014 年度 実績報告書

骨格筋アミノ酸代謝と筋量制御における転写調節因子FOXO1/PGC1αの役割

研究課題

研究課題/領域番号 25292076
研究機関京都府立大学

研究代表者

亀井 康富  京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (70300829)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード骨格筋 / アミノ酸代謝 / 転写調節
研究実績の概要

転写共役因子PGC1α(Peroxisome proliferator-activated receptor (PPAR)γ coactivator 1α)は、骨格筋等において運動により発現増加し、ミトコンドリアの生合成・筋線維タイプの変化・脂肪酸酸化促進など、エネルギー代謝や運動に関連する遺伝子発現を活性化することが知られている。PGC1α過剰発現マウスにおけるマイクロアレイ解析を完了した。PGC1α-Tgマウスで発現増加した遺伝子についてバイオインフォマティクス解析を行った。その結果、これまでにPGC1αとの関連が知られていなかった分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acids;BCAA)代謝経路が検出された。骨格筋におけるPGC1αはBCAA代謝に貢献し、運動により生じるPGC1αの発現増加はBCAA代謝に関与している可能性が示唆された。一方、Forkhead box O1(FOXO1)は転写因子であり、インスリンシグナルを負に制御することが知られる。我々はこれまでに、エネルギー欠乏状態においてFOXO1遺伝子の発現が骨格筋で著しく増加し、骨格筋特異的FOXO1過剰発現マウス(FOXO1 Tgマウス)では、骨格筋萎縮が生じることを示した。本研究において、FOXO1がグルタミン合成酵素遺伝子を発現制御することが明らかとなった。FOXO1によるグルタミン合成酵素の発現促進は、異化時に生成されるアンモニアの消去にも役割を果たす可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究においては、運動が身体にどのように良い効果を与えるかという分子説明を可能とした点について学術的な価値がある。すなわち、BCAAは運動時の骨格筋の重要なエネルギー源であり、サプリメントとしての需要が高まっている。しかし、運動時にどのようなメカニズムでBCAA利用が生ずるかは不明であった。本研究において、運動とBCAA利用をつなぐ欠けたピース「missing link」がPGC1αであることを発見した。これは運動生理学のみならず、機能性食品の開発等の応用にとっても重要な知見であると考える。これは運動が、どのように生活習慣病を予防・改善するかという分子的な説明を与え得るものであり、今後の機能性食品の開発につながるものである。
本研究は、当初の研究計画をおおむね順調に推進し、本年度中に複数の論文発表および学会発表をすることが出来た。また本研究に関する学会発表を行なった大学院生が計4回表彰を受け(うち1回は国際学会における表彰)、加えて日本栄養食糧学会にてトピックス演題として選出された。加えて、本研究を遂行する過程で、当初予想していなかった興味深い研究成果を得ている。

今後の研究の推進方策

本研究では転写調節因子であるFOXO1とPGC1αによる骨格筋アミノ酸代謝を解析し、アミノ酸代謝と密接に関連する筋萎縮・肥大について分子機序を明らかにすることを目指し、以下の実験を行う。
(1)遺伝子改変マウスのDNAマイクロアレイによる発現変動解析、骨格筋特異的なFOXO1、PGC1αの遺伝子改変マウスのDNAマイクロアレイ解析を行い、FOXO1、PGC1αの標的遺伝子候補を抽出する。(2)PGC1αによるアミノ酸代謝(BCAA分解)の機能解析、代謝産物の変動を測定した。BCAAを投与する事により、持久的運動能力が野生型マウスに比べて向上するか否かを検討する。(3)指標アミノ酸酸化法におけるタンパク質必要量の測定、指標アミノ酸酸化法のマウス実験系の確立を行ない、制限アミノ酸の必要量を測定することを試みる。(4)メタボローム解析、PGC1αおよびFOXO1遺伝子改変マウスの骨格筋のメタボローム解析(アミノ酸類の測定が可能なCE-TOF-MS解析)を施行する。(5)筋萎縮および筋肥大の分子機序の解明に関する研究、PGC1α欠損マウスにBCAA投与や運動刺激等を与え、BCAA代謝および筋肥大・萎縮の表現型およびシグナル(mTOR活性)を検討する。また、FOXO1とFOXO3aおよびFOXO4遺伝子を骨格筋で欠損させるトリプルノックアウトマウスの作出を行なう。

次年度使用額が生じた理由

マイクロアレイ用のサンプルの調製を完了し、マイクロアレイチップを最終年度に購入して解析する予定である。

次年度使用額の使用計画

マイクロアレイ、次世代シーケンサー、メタボロームなどの網羅的解析に使用する。さらに遺伝子改変マウスの表現型の解析に使用する予定である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] ATM Regulates Adipocyte Differentiation and Contributes to Glucose Homeostasis.2015

    • 著者名/発表者名
      Takagi M, Uno H, Nishi R, Sugimoto M, Hasegawa S, Piao J, Ihara N, Kanai S, Kakei S, Tamura Y, Suganami T, Kamei Y, Shimizu T, Yasuda A, Ogawa Y, Mizutani S.
    • 雑誌名

      Cell Rep.

      巻: S2211-1247 ページ: 00052-2

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2015.01.027.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Ligand-activated PPARα-dependent DNA demethylation regulates the fatty acid β-oxidation genes in the postnatal liver.2015

    • 著者名/発表者名
      Ehara T, Kamei Y, Yuan X, Takahashi M, Kanai S, Tamura E, Tsujimoto K, Tamiya T, Nakagawa Y, Shimano H, Takai-Igarashi T, Hatada I, Suganami T, Hashimoto K, Ogawa Y.
    • 雑誌名

      Diabetes

      巻: 64 ページ: 775-84

    • DOI

      10.2337/db14-0158

    • 査読あり
  • [雑誌論文] FOXO1 activates glutamine synthetase gene in mouse skeletal muscles through a region downstream of 3'-UTR: possible contribution to ammonia detoxification.2014

    • 著者名/発表者名
      Kamei Y, Hattori M, Hatazawa Y, Kasahara T, Kanou M, Kanai S, Yuan X, Suganami T, Lamers WH, Kitamura T, Ogawa Y.
    • 雑誌名

      Am J Physiol Endocrinol Metab

      巻: 307 ページ: E485-93

    • DOI

      10.1152/ajpendo.00177.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] PGC-1α-mediated branched-chain amino acid metabolism in the skeletal muscle.2014

    • 著者名/発表者名
      Hatazawa Y, Tadaishi M, Nagaike Y, Morita A, Ogawa Y, Ezaki O, Takai-Igarashi T, Kitaura Y, Shimomura Y, Kamei Y, Miura S.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 9 ページ: e91006

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0091006.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Endothelial PGC-1α mediates vascular dysfunction in diabetes.2014

    • 著者名/発表者名
      Sawada N, Jiang A, Takizawa F, Safdar A, Manika A, Tesmenitsky Y, Kang KT, Bischoff J, Kalwa H, Sartoretto JL, Kamei Y, Benjamin LE, Watada H, Ogawa Y, Higashikuni Y, Kessinger CW, Jaffer FA, Michel T, Sata M, Croce K, Tanaka R, Arany Z.
    • 雑誌名

      Cell Metab.

      巻: 19 ページ: 246-58.

    • DOI

      10.1016/j.cmet.2013.12.014.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Downregulation of Pgc-1α expression by tea leaves and their by-products.2014

    • 著者名/発表者名
      Shibuya E, Murakami M, Kondo M, Kamei Y, Tomonaga S, Matsui T, Funaba M.
    • 雑誌名

      Cell Biochem Funct.

      巻: 32 ページ: 236-40.

    • DOI

      10.1002/cbf.3006.

    • 査読あり
  • [学会発表] 核内受容体・転写共役因子と骨格筋代謝2014

    • 著者名/発表者名
      亀井康富
    • 学会等名
      第一回バイオ・フロンティア・プラットフォームシンポジウム
    • 発表場所
      京都府京都市
    • 年月日
      2014-12-01 – 2014-12-01
    • 招待講演
  • [学会発表] FOXO1は骨格筋のグルタミン代謝を活性化する2014

    • 著者名/発表者名
      亀井康富、服部真季、畑澤幸乃、金井紗綾香、北村忠弘、小川佳宏
    • 学会等名
      日本アミノ酸学会 第8回学術大会
    • 発表場所
      東京都世田谷区
    • 年月日
      2014-11-08 – 2014-11-08
    • 招待講演
  • [学会発表] 骨格筋代謝の遺伝子発現制御2014

    • 著者名/発表者名
      亀井康富、三浦進司
    • 学会等名
      第69回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      長崎県長崎市
    • 年月日
      2014-09-19 – 2014-09-19
    • 招待講演
  • [学会発表] FOXO1 activates glutamine synthetase gene in mouse skeletal muscles2014

    • 著者名/発表者名
      Yasutomi Kamei, Maki Hattori, Yukino Hatazawa, Tomomi Kasahara, Tadahiro Kitamura, Yoshihiro Ogawa
    • 学会等名
      Experimental Biology 2014
    • 発表場所
      米国カリフォルニア州
    • 年月日
      2014-04-28 – 2014-04-28
  • [学会発表] 骨格筋アミノ酸代謝における遺伝子発現制御2014

    • 著者名/発表者名
      亀井 康富
    • 学会等名
      2014年度日本農芸化学会大会(シンポジウム)
    • 発表場所
      神奈川県川崎市
    • 年月日
      2014-04-01 – 2014-04-01
    • 招待講演
  • [図書] 化学と生物「骨格筋と脂肪組織にかかわる最近の話題」2015

    • 著者名/発表者名
      山下敦史、亀井康富
    • 総ページ数
      1
    • 出版者
      日本農芸化学会 会誌
  • [図書] 月刊糖尿病 「骨格筋からみた糖尿病の病態と治療」2014

    • 著者名/発表者名
      亀井康富,小川佳宏
    • 総ページ数
      6
    • 出版者
      医学出版
  • [備考] 京都府立大学生命環境科学研究科分子栄養学研究室

    • URL

      http://nutrition.life.kpu.ac.jp/

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公開日: 2016-06-01  

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