研究課題/領域番号 |
25292077
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
関 泰一郎 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20187834)
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研究分担者 |
細野 崇 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (80445741)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | garlic / thrombosis |
研究実績の概要 |
我が国における血栓性疾患による死亡者数の総計は、がんによる死亡者数に匹敵し、予防法の確立が急務である。アテローム性動脈硬化を基盤とした血栓性疾患は外因系凝固の開始因子Tissue Factor (TF) が起点となっており、Cys186とCys209のジスルフィド結合形成により活性化を受ける。本研究では、ガーリック香気成分diallyl trisulfide (DATS)の血小板凝集抑制作用に加えて、DATSが外因系凝固系に及ぼす影響を中心にその抗血栓作用について検討した。 HL60細胞にホルボールエステル(PMA)を添加培養してTF発現を誘導した。このTF発現HL60細胞に酸化剤であるHgCl2を処理することでジスルフィド結合を形成させ、TFを活性化することができる。活性化TFに血漿を添加し、フィブリンクロット形成時間を測定することで外因系凝固を評価する測定系を確立した。また、組換えTFをSDS-PAGEに供することでジスルフィド結合形成状態を検討した。 また、遺伝子組替え技術により大腸菌を用いてTAを産生する技術を確立し、精製TFタンパク質を用いてジスルフィド結合の修飾状況についても検討した。 TF発現HL60にシステイン残基保護剤のN-ethylmaleimide (NEM)を処理するとクロット形成時間は延長した。また、組換えTFをNEMで処理するとHgCl2によるジスルフィド結合形成は阻害された。TF発現HL60細胞にDATSを処理するとNEMと同様、クロット形成時間を延長したが、DATS処理組換えTFではHgCl2によるジスルフィド結合の形成阻害は確認されなかった。これらの結果からDATSは外因系凝固を阻害すること、血栓形成を抑制する可能性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外因系凝固測定系、遺伝子組替え技術を用いたTF産生系をはじめ、本研究で必要とされる測定系を確立し、いくつかの機能性食品成分の機能を検討することができた。また、当該酵素の分子修飾など作用メカニズムの一端を明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで通り、研究代表者、分担者、研究協力者が定期的に研究の進捗状況に関して密接に情報を交換する。これらを基に綿密な研究計画を立案し、実行していくことにより効率よく研究を展開していく。特に、チオレドキシン、プロテインジスルフィドイソメラーゼが関与する組織因子活性制御系に関しては、研究協力者(大学院生、学部生)の協力を得て、精度の高い実験を効率よく実施する。また、シンポジウム、学会などでの発表の機会も有効に利用し、批判を得て投稿論文の完成につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養白血病細胞を用いた組織因子(TF)発現誘導実験系の確立に予定より時間を必要としたためこの研究関連の消耗品(ウシ血清、培養液等)の使用量が当初見込みより少なかった。また、購入した高価な消耗品にいくつかを販売キャンペーンを有効に利用することにより計画した予算より安価に購入できた。そのため一部の予算を次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
培養関連消耗品(細胞培養用ウシ胎児血清、血管内皮細胞培養用培養液)の購入、タンパク質化学関連の消耗品の購入に充当して研究を進展させる。
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