研究課題/領域番号 |
25292081
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
後藤 晋 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (60323474)
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研究分担者 |
北村 系子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所・北方林遺伝資源保全担当チーム, チーム長 (00343814)
岩田 洋佳 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00355489)
上野 真義 独立行政法人森林総合研究所, 森林遺伝領域・針葉樹ゲノム担当チーム, チーム長 (40414479)
久本 洋子 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (60586014)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 標高 / 耐凍性 / 連鎖地図 / フェノロジー / QTL / RAD-seq / 分離集団 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
1.トドマツ連鎖地図作成とQTL解析(岩田・後藤):トドマツ分離集団を用いて500程度のSNPマーカーを用いて連鎖地図を作成した。これまでに計測した初期成長やフェノロジーに関するQTL解析を行った結果、二次伸びの有無や根元径などについて有意なQTLが検出された。これらの成果については、2015年3月の森林学会で口頭発表した。 2. ESTライブラリーを用いた候補遺伝子の検出(上野・久本):昨年度に収集した36.5Gbのリード配列のクリーニングとアセンブルを行った結果、平均955bp~1324bpのトランスクリプトにまとめることができた。これらから最終的に得られたレファレンス配列は、総計223,621本のトランスクリプトと71,707個の遺伝子から構成され、平均のトランスクリプト長は1,325bpであった。 3. トドマツにおける季節別の遺伝子発現(久本・北村):2013年の8月、10月、12月、2014年2月、4月、6月に採取したトドマツ針葉18サンプルのRNAを用いて、4遺伝子(PaFLT2、FLC、PaCOL、UVH1)の遺伝子発現量をリアルタイムRT-PCRで解析した結果PaFLT2(FTのホモログ)の発現に季節変動が見られた。 4.由来標高がトドマツ繁殖量に及ぼす影響評価(久本・後藤):これまで、2011年から2014年まで、毎年トドマツF1の21個体(L×L、L×H、H×L、H×H)の球果数の測定を実施した。2011年と2014年にやや豊作となったが、球果数はLH<LL<HL<HHとなり、単にゲノム組成だけの問題ではなく、何らかのエピジェネティックな効果が働いている可能性が示唆された。本成果は、2015年3月の森林学会で口頭発表した。 5 耐凍性フェノロジーに及ぼす遺伝子の効果(後藤):トドマツ標高間相互移植試験地のシュートを-30℃で冷凍処理して、しばらく経過した後に、針葉の被害度を調査した結果、高標高産ほど、植栽地が高標高ほど、早期に耐凍性を獲得することが示された。本成果については、Plant Biology誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・当初、巨大なゲノムを持つトドマツの連鎖地図の作成では、簡単に染色体数と一致しないことが想定されたが、高密度なRAD-seqマーカーとJoinMap等の導入によりP1とP2の両方で12連鎖群にまとまった連鎖地図が作成できた。 ・昨年度に得ていたトドマツの部位別ESTライブラリを明治大学の矢野研究室との共同研究を行うことで、精度の高いトドマツ遺伝子カタログを作成できた。 ・ESTライブラリを用いて機能遺伝子をターゲットとした遺伝子発現分析を行い、FTホモログであるPaFLT2で季節的な変動を検出できた。 ・耐凍性フェノロジーについて、産地間差と植栽地間差を定量的に評価した論文を執筆し、Plant Biology誌に掲載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
・連鎖地図については、現在、マーカーの絞り方、データ欠損個体の選び方等で改善の余地があり、それらを適正に行うことで地図距離がトドマツで予想される距離と同程度になるようにした上で、連鎖地図の完成をさせる。 ・現在、分離集団の1年目から3年目のフェノロジー、成長データについてQTL解析を進めている。特に、二次伸びについては、もともと高標高産が少なく、低標高産が多いという傾向が知られており、さらに遺伝子型と表現型の対応関係を詳細に調べて、連鎖地図の作成とQTL解析をセットにして論文として投稿する。 ・RNA-seqで得られたデータについて、今年度に作成した遺伝子カタログと対応させて、より精度の高いリファレンスを作成する。また、これまでの成果を取りまとめ、論文として投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
F2実生苗のRAD-seq分析によりQTL分析を行ったが、これらで得られたQTLが本当に意味があるのかを知るために、SNPが実際の低標高と高標高の集団で多型になるかどうかを確認する必要が生じ、その分のRADseq分析用の費用を次年度に残すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
低標高と高標高の接ぎ木苗、また、低標高、高標高の天然集団からDNAを抽出し、RAD-seq分析を外注し、検出したQTLが低標高と高標高で一般にみられるものかどうかを検討する。
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