研究課題/領域番号 |
25292084
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鎌田 直人 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (90303255)
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研究分担者 |
村上 正志 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50312400)
平尾 聡秀 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (90598210)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 葉食性昆虫 / ブナアオシャチホコ / カラマツハラアカハバチ / 昆虫病原菌 / サナギタケ / 小哺乳類 / 捕食者 |
研究概要 |
最長28年間の長期間にわたり密度変動を調査してきた東北地方の4地域(八甲田山・岩木山・八幡平・安比高原)のブナ林でブナアオシャチホコの幼虫の密度調査を引き続き行った。八幡平ではブナアオシャチホコによる、ブナの失葉が認められ、昆虫病原菌であるサナギタケの発生も認められた。2009年からカラマツハラカハバチが大発生して、密度や天敵を調査している東大北海道演習林のカラマツ人工林で引き続きカラマツハラアカハバチの生命表の作成の基礎となるデータの収集を行った。全体としてカラマツハラアカハバチの密度は減少しつつあるが、依然として食害が目視でわかるほど強い食害が続いている。大発生を制御するほど強く働く天敵は現在まで見つかっていない。これらの試験地から、表土を採集して、昆虫病原性微生物の調査を行った。土壌中のサナギタケの定量を可能とするために、特異的なプライマーの設計とリアルタイムPCR(qPCR)条件の検討を行った。その結果、設計した8つのプライマーのうち一つが、サナギタケに特異的なプライマーとしてqPCRに利用できるメドがたった。また、qPCRの条件の検討も終了し、実際にサナギタケの子実体が発生していた八幡平の土壌からqPCRによってサナギタケを検出できた。しかし、濃度を推定できる限界以下の低濃度であったため、今後、サンプリング方法やDNA抽出方法に改良を加える必要があるものと考えられた。この結果は、現在Journal of Invertebrate Pathologyに投稿準備中である。カラマツハラアカハバチでは、小哺乳類の捕食が比較的重要であると考えられたため、小哺乳類の動態を組み込んだモデルを開発中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DNAを使ったサナギタケの定量手法の開発に当初予想していた以上の時間を要してしまい、他の病原菌や環境要因、微生物群集の解析に関する研究が、当初の計画よりも遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
サナギタケ以外に重要と考えられている、Beauveria bassiana、Isaria fumosorosea、Isaria farinosa、Metarhizium anisopliaeについて、qPCRに使う特異的プライマーの開発を行い、qPCRの最適条件を決定する。これらを使って、ブナアオシャチホコやカラマツハラアカハバチの個体群のフェーズによって、昆虫病原菌の密度がどのように変化するのかを調べる。また、同時に、環境要因、微生物群集の解析を行い、とくに、土壌の有機物含有量との関係や微生物群集の多様性と、これら昆虫病原菌の密度との関係を解析する。また、近年シカによる森林衰退により昆虫の大発生が恒常化する例が丹沢で見られるが、同様にシカによって下層植生が衰退し土壌の流萌芽認められる森林において、昆虫微生物の密度を調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度行う予定であった、微生物群集解析と環境測定(土壌有機物量など)が未実施であったため H26年度とH27年度に微生物群集解析と環境測定(土壌有機物量など)を実施する。また、環境測定に必要が機器(土壌水分系やpH計)を購入予定である。
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