研究課題/領域番号 |
25292084
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鎌田 直人 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (90303255)
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研究分担者 |
村上 正志 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50312400)
平尾 聡秀 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (90598210)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 葉食性昆虫 / ブナアオシャチホコ / カラマツハラアカハバチ / 昆虫病原菌 / サナギタケ / Beauveria brongniartii / 小哺乳類 / 階層ベイズモデル |
研究実績の概要 |
最長29年間の長期にわたり密度変動を調査してきた東北地方の4地域(八甲田山・岩木山・八幡平・安比高原)のブナ林でブナアオシャチホコの幼虫の密度調査を引き続き行った。2012-13年に失葉が目立つほどに密度が高くなったが、2014年には密度は減少し目立った失葉は認められなかった。サナギタケ子実体の密度も2013年に比べると減少した。2009年からカラマツハラアカハバチが大発生して、密度や天敵を調査している東大北海道演習林のカラマツ人工林で、引き続きカラマツハラアカハバチの生命表の作成の基礎となるデータの収集を行った。2013年に一旦密度は減少に転じたが、2014年には再び増加に転じた。2014年までの6年間の時空間動態をまとめると、期間を通じて密度が高いエピセンターが存在し、それ以外の場所では高密度の領域で密度が変動し、約半分の年には完全な食害は免れていた。全体としては、6年間のすべての年にいずれの調査プロットで完全な失葉が認められた。密度依存的に働く生物的な脂肪要因が認められないことが原因と考えられた。その一方で、カラマツ針葉の養分と防御物質には、個々のカラマツ個体の食害履歴が蓄積して影響していた。2014年のカラマツ針葉の窒素含有率は、大発生が始まる前の約半分にまで減少していた。一方、昆虫病原菌としてBeauveria brongniartiiがカラマツハラアカハバチの死んだ繭から検出された。これまで膜翅目に本種が規制する報告が見られないため、2015年には摂取実験を行って、カラマツハラアカハバチに対する病原性を検定する。qPCRによって環境DNAから昆虫病原性糸状菌を定量するための技術を開発し、現時点でサナギタケ(Cordyceps militaris)のほか、Isaria fumosorosea, Metarhizxium anisopliae, Beauveria bassianaで方法が確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
周期的大発生種であるブナアオシャチホコと、持続的大発生種であるカラマツハラアカハバチの個体群動態と密度変動要因を比較することによって、大発生に強い森林生態系の特徴を明らかにすることが目的の一つであるが、カラマツハラアカハバチでは密度依存的な死亡要因が有効に働かないことが、大発生が長続きする原因であることが明らかにされた。しかし、なぜ密度依存的な死亡要因が有効に働かないのかについては、現時点ではまだよくわからない。
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今後の研究の推進方策 |
最終年である2015年は、ブナアオシャチホコ・カラマツハラアカハバチのルーチン調査(密度推定、死亡要因の検定)のほかに、特にカラマツハラアカハバチと寄主であるカラマツとの関係に着目した研究を進める。具体的には、カラマツの個体単位で食害履歴と年輪解析の結果を照合し、腰に至るまでのプロセスを解析する。その一方で、カラマツの針葉の化学分析によって、カラマツの誘導防御反応がカラマツハラアカハバチの個体群に及ぼす影響を解析する。 また、北海道演習林では、クスサンの大発生が長期間続いているため、衰弱したウダイカンバ個体にアンブロシアキクイムシが穿孔している。これらの関係についても調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
BIOLOGによる解析(外部委託)に莫大な費用がかかるため、その解析費用を基金の方に保留しており、H27年度に使用予定である
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次年度使用額の使用計画 |
BIOLOGによる解析(1点3万円×40点)=120万円をH27年度に外注する予定である
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