研究実績の概要 |
最長31年間の長期にわたり密度変動を調査してきた東北地方の4地域(八甲田山・岩木山・八幡平・安比高原)のブナ林でブナアオシャチホコの幼虫の密度調査を引き続き行った。2012-13年に失葉が目立つほどに密度が高くなったが、2014年には密度は減少し、以降目立った失葉は認められなかった。サナギタケ子実体の密度も2013年をピークとして14年には大きく減少し、2015-2016年には確認することができなかった。2009年からカラマツハラアカハバチが大発生して、密度や天敵を調査している東大北海道演習林のカラマツ人工林で、引き続きカラマツハラアカハバチの生命表の作成の基礎となるデータの収集を行った。2013年に一旦密度は減少に転じたが、2014年には再び増加に転じたが、2016年になると密度は大きく減少した。2016年までの8年間の時空間動態をまとめると、期間を通じて密度が高いエピセンターが存在し、それ以外の場所では高密度の領域で密度が変動し、約半分の年には完全な食害は免れていた。全体としては、8年間のうち2016年を除くすべての年に、いずれの調査プロットで完全な失葉が認められた。密度依存的に働く生物的な脂肪要因が認められないことが原因と考えられた。その一方で、カラマツ針葉の養分と防御物質には、個々のカラマツ個体の食害履歴が蓄積して影響していた。2014年のカラマツ針葉の窒素含有率は、大発生が始まる前の約半分にまで減少していた。一方、昆虫病原菌としてBeauveria brongniartiiがカラマツハラアカハバチの死んだ繭から検出された。qPCRによって環境DNAから昆虫病原性糸状菌を定量するための技術を開発し、現時点でサナギタケ(Cordyceps militaris)のほか、Isaria fumosorosea, Metarhizxium anisopliae, Beauveria bassianaで方法が確立した。
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