研究課題/領域番号 |
25292085
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
梶 光一 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70436674)
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研究分担者 |
吉田 剛司 酪農学園大学, 農学生命科学部, 教授 (00458134)
五味 高志 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30378921)
小池 伸介 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (40514865)
日浦 勉 北海道大学, 学内共同利用施設等, 教授 (70250496)
赤坂 宗光 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (70446384)
石川 幸男 弘前大学, 学内共同利用施設等, 教授 (80193291)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 過採食 / ニホンジカ / 個体群動態 / 森林植生 / 生物多様性 / 土壌侵食 / 昆虫類 |
研究実績の概要 |
洞爺湖中島と知床において,シカ個体数管理による植生変化が鳥類相と昆虫相に与える影響を把握した。知床ではシカの増加期に体サイズや体重の小型化が進んだ。 過去の記録と比較することによって、シカ密度の上昇に対応した群落構造と組成の変化を検討した結果、森林の林床植生および草原の組成には、採食圧のかからないレフュージアの分布が重要な要因であることが示唆された。1984年に設置され、概ね毎年植生調査が実施されている洞爺湖中島のシカ排除区および開放区における収集データのデジタル化、およびデータベース化を行ったところ、系統多様性は種多様性と比べ、開放区において時間経過に伴い明瞭に低下していた。 シカ排除区と高密度区で林床植物のバイオマス、土壌窒素含量、林冠木の葉の窒素含量を、優占する落葉広葉樹で測定したところ、シカ排除区に比べて高密度区で林床植物のバイオマスが低下し、土壌窒素含量が増加し、林冠木の葉の窒素含量が増加した。このことはシカが採食によってササを排除することを介して林床植生と林冠木の栄養塩をめぐる競争を緩和し、物質循環過程を改変したことを示唆している。 シカの食害による植生量の衰退による数十年スケールでの土壌侵食量の指標として、有珠山の火山活動などにより火山灰降下を用いて手法の適用性について検討した。シカの個体数変動プロセスは、林床植生、土壌侵食、土壌栄養塩蓄積の流れの中で、森林生態系の基礎生産へ影響を及ぼすことが考えられた。 北大苫小牧研究林のシカ排除区とシカ高密度区およびシカ低密度区で複数の昆虫類分類群のサンプリングにより、糞虫類やカミキリムシ類はシカ高密度化に対し正の反応を示し、オサムシ類やシデムシ類、草本・低木類を食餌植物とする蛾類では負の反応が見られた。これらは下層植生に依存し、過採食が食物資源や生息環境に負の影響を及ぼすと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シカ個体群に関して、知床および洞爺湖においてセンサス、捕獲個体の計測が実施できた。しかし、苫小牧については捕獲個体のサンプリングができなかった。知床岬では分担研究者とともに合同調査が実施できた。植生調査、土壌サンプル、糞中サンプルなども順調に実施できている。 2015年3月には生態学会の企画シンポジウム「過採食の生態学的意義」を開催したところ、大変盛況であった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度であるため、引き続き野外調査の継続を行うとともに、各種データの統合的な解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
野外調査で収集した試料の分析を行う予定だったが、作業の効率を考えて、最終年度の補足調査で得た資料と合わせて解析することにしたため、予算を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度であるため、年度当初に執行計画をたてて使用する予定である。
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