研究課題/領域番号 |
25292088
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉岡 崇仁 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (50202396)
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研究分担者 |
舘野 隆之輔 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (60390712)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 植生 / 窒素循環 / シカ食害 / 間伐施業 |
研究概要 |
本研究では、シカ食害の影響が大きい天然生林、人工林、草地の生態系において、森林生態系保全のためのシカ排除の効果を評価することを目的として、以下の4課題に取り組んでいる。1)草地生態系における生物多様性に及ぼすシカ食害の影響評価、2)人工林間伐施業による下層植生の発達とシカ食害の関係解明、3)シカ食害が土壌―植生の相互作用系に与える影響評価、4)森林の水源涵養機能(水質浄化、水質形成)に及ぼすシカ食害の影響評価。 平成25年度は、課題1に関して、ススキ草原実験区(芦生研究林長治谷実験区)においてシカ防除試験を実施した。課題2では、スギ人工林(芦生研究林宮ノ森実験区)にシカ柵を設置し、間伐後の柵内外の植生調査および土壌サンプルの採取を行った。課題3では、新たに京都大学北海道研究林の天然林内にシカ柵実験区を設置し、柵設置前の植生調査および土壌採取を行った。課題4に関しては、天然生林(芦生研究林ウツロ谷及びキエ谷実験区)における集水域ベースでのシカ排除実験において、渓流水質の観測を継続した。 また従来のシカ防除ネットを使ったシカ柵は、積雪期にネットを下す必要があり、柵上げ前の初春のシカによる摂食を防ぐことができないという問題がある。そこで芦生研究林内野田畑斜面実験区に小区画の鉄柵を3か所試験的に設置し、積雪の多い地域で継続的にシカを排除する方法の検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存の試験区を活用した実験では、概ね順調に調査データを取得することができた。草原生態系におけるシカ排除実験では、5年には、柵内でタニウツギやツル植物の被度が高くなってきたのに対し、柵外ではイワヒメワラビやコバノイシカグマといったシダ植物の被度が高くなってきた。柵外では5年間にわたって植生の多様性が低下したが、柵内では、柵設置1、3年後に多様性が高くなったが、5年目には柵外と同程度まで低下していた。これらことから、草本群落では、長期にわたる排除柵設置は大型草本の優占、さらには森林への遷移が進行するものと考えられる。下層植生の衰退した壮齢スギ人工林では間伐によるスギの成長促進効果や下層植生の増加に効果はあるものの、早期に下層植生の生物多様性回復を図るためにはさらなる工夫が必要であることを示唆された。 以上のように、初期の計画は大宗順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は一部未分析の試料の化学分析を進めていく予定である。また新たに設置する予定であったシカ防除柵については、分担者の勤務地である京都大学北海道研究林においてその一部を実施したたが、これを継続することにより、シカ食害の影響評価のスペクトルをより明確にすることを目指す。また、京都大学芦生研究林で進行中の実験のために研究支援員を雇用し、データの取得および解析を推進する予定である。とくに、GISを用いて、空間情報と植生・土壌・水質などの観測データの同化を図り、統合的、重層的な解析の効率化を図る
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、当初予定していた研究支援のための研究員を雇用することができず、そのための人件費がほとんど残ってしまった。また、そのための物品費や旅費等にも残額が出た。データ解析については、次年度に持ち越すことになったが、研究テーマとして取りくんだ大学院生等の協力によりその他の計画については、ほぼ実施することができた。 基金にて生じた「次年度使用額」については、平成26年度の補助金の一部と合わせることで、研究支援員として博士研究員を雇用することにした。予算枠が、当初予定より拡大したため、研究支援員にGISによる解析なども実施させることとした。また、北海道研究林でもシカ排除実験を実施することにして、より効率的、包括的な研究を実施する計画とした。
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