研究課題/領域番号 |
25292089
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
黒田 慶子 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20353675)
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研究分担者 |
石井 弘明 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50346251)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イチジク / 株枯病 / Ceratocystis ficicola / 水分生理 / 感受性 / 萎凋 / 通導 |
研究概要 |
イチジク品種「蓬莱柿」の挿し木2年苗(枝長101.5,接種部位茎径13.6 mm)の主幹下部に、株枯病菌Ceratocystis ficicolaを4点接種し、その後定期的に抜き取り、水溶性色素(酸性フクシン)の吸入により水分通導の状態を調べた。宿主組織内の病原菌の分布範囲を組織分離により確認すると共に、宿主細胞の反応を解剖学的手法によって観察し、水分通導阻害と病徴との関係を検討した。 病徴発現前の個体を中心に光学顕微鏡で観察したところ、接種1週間後には接種部周辺の道管内腔で菌糸が観察され、さらに日数の経過に伴い、放射柔細胞や軸方向柔細胞内への菌糸の侵入が確認された。菌糸の周囲では宿主の防御反応による二次代謝物質の生産が増加し、柔細胞内および道管、木部繊維等の細胞壁は黄色~褐色に着色した。この変色部位(傷害心材)では、道管の水分通導が停止することが知られている。柔細胞内のデンプンは接種後に徐々に減少してやがて消失し、防御物質の生産に消費されたものと推測された。接種2~3週間後には接種部周辺の木部では変色範囲がさらに拡大した。葉の黄変や萎凋という外部病徴の発現前の段階で、通水可能な道管が著しく減少していることが判明した。これらの結果から、株枯病菌の接種部位の周辺で道管の通水が停止すること、その結果、枝葉への水分供給が停止し、萎凋~枯死に至ることが示唆された。感染から枯死までに樹幹組織内で観察される現象は、Ceratocystis polonicaによるエゾマツの萎凋病およびRaffaelea quercivoraによるブナ科樹木萎凋病(ナラ枯れ)との共通点が認められた。イチジク苗への灌水コントロールを行い、土壌水分量と発病しやすさ(感受性)の関係を検出しようとしたが、小型ポットへの植栽であったため水分調整が困難で、今年度は明確な結果が得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イチジク苗木を使用した接種実験は計画通りに実施し、発病~萎凋にいたる過程を、病理学的・解剖学的手法により明らかにすることができた。接種・感染木では、病原菌の分布拡大にともなって道管の通水機能の停止範囲が広がることが明らかにでき、その結果として萎凋という病徴が発生することが確認できた。従って、研究はおおむね順調に進展していると判断した。ただし、苗木ポットの土壌水分は、灌水条件を変えるだけでは変動が大きく、土壌水分のコントロールは困難であった。今年度は試行の段階であり、次年度は手法を改善したい。
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今後の研究の推進方策 |
イチジク株枯病については、苗ポットの土壌含水率の調整だけでなく、樹液流速の測定等の他の手法も用いて、水ストレスの発病への影響を調査する予定である。また、自然条件下でのナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病)の発生要因の検討については、兵庫県篠山市に実験プロットを設定し、計測機器設置の個体数を増加して実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の実験は試行(予備実験)の部分があったため、計測機器消耗品の購入がやや少なかった。また、実験補助および資料整理のための人件費への支出が少なめになった。 計測機器(消耗品)を追加購入し、多数の地点と試料で測定を行う。また、昨年度よりも調査と実験の日数が増えるため、人件費として使用する。
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